口周りの手術が続いています。口唇の手術に到る患者さんは、他部位の治療を経てきた人が多いのです。そのような訳で、口周りの手術は最終兵器になります。今回まず、白唇短縮術に到りました。口角は二次的になります。鼻柱も検討の余地があります。アレッ、白唇部短縮術が最終兵器ではなかったみたいですが、いくつかの点については今回の術前診察中にも話しました。術後の診療中にも検討していきましょう。今回は第二段階というところでしょう。
症例は26歳の女性。鼻中隔延長術と鼻プロテーシス挿入術は受けている。他にも改善する希望点がある。だが相談してもこちらの手術時間が限られるので、今回は白唇部短縮術単独をすることとなったのです。眼瞼は診察時にプランは立てたし、鼻の改良点もある。ダウンタイムが取れる期間に何とかしたいと手配したが、同時施行は手術時間的に難しい。
上の画像が術前の正面像と側面像、斜位像です。理学所見(計測)を取ると、口唇長は17mmだが、歯槽が出ている割に歯牙は出ていない為に、白唇から赤唇に掛けてべたっとしている。縦の比率は、上顔面72mm!と額が広いのは珍しいが髪を上げるとおもなが感を助長している。中顔面62mm、下顔面65mmで下がやはり長いので間延びしている感は口唇にある典型例です。鼻翼幅36mmに対して口唇幅46mmと5:8の黄金比率にするためには口唇幅を50mm以上は欲しいし面長間の緩和にもなる。口角を斜め上に挙上する必要がある。診察の結果スケデュールを立てるも、今回は白唇部短縮術の単独施行となりました。確かに時間が取れるなら、段階を踏んでいく方が形態と機能を把握し易いので、賛成しました。
手術は定式のデザインです。鼻翼~鼻柱に駆けては鼻孔底の堤を損ねない様にその麓を切開します。鼻孔の中に逃がすと堤が無くなって鼻の中が見えてしまいます。このデザインは世界的美容外科医のオスカーラミレスが提唱していて、2003年に発表している”Bull’s horn”:雄牛の角という形を踏襲しています。切除幅は5mm以内に抑えます。これ以上取ると傷跡が拡がり、つまり後戻りするリスクが高くなります。外反を求めたいので切除深は皮下脂肪層を半層残します。もちろんその下層の口輪筋と皮下脂肪層も縫い寄せて、真皮縫合を密にしてその時点で傷に隙間がない様にすれば後戻りしません。下の画像は手術直後です。
白唇部切除の単独症例はこれまで5人に一人くらいでしょうか?。今度数えてみます。やはり相対的に口角が下がります。術中に聴いたことですが、予め赤唇部切除術を受けていました。下はもう一枚術直後の画像ですが、力を抜くと全く口が閉じません。上の画像は随意的に閉じてもらいましたが、局麻の影響で上手くいきません。なんか曲がっています。
そして術後1週間で抜糸しました。口輪筋が働くようになって力を入れれば閉じますが、まだ無理している感が見られ、ぎこちないです。自然に閉じるのは2~4週間かかるようです。これまでの症例を見れば判ります。また鼻翼の位置は既に復しています。
今回患者さんに依頼して、顔面の印象の画像を提示させてもらいます。眼瞼部付近は隠します。
上左の術前の画像像と上中の手術直後の画像を比べてみると、確かに術前は面長で間延びした下顔面の印象で、本症例は縦サイズが長いのですが、少なくとも術後は下顔面が短くなった為に顔面全体が短く見えます。逆に上顔面も長いのが強調された感がありますが、それは髪を挙げて撮影したからでもあります。上右の術後1週間の画像では、前髪を降ろして来院されました。すると上顔面の長さが減って見えます。そして口輪筋が働く様になったので口は閉じて下顎が挙がりました。まだ力を入れないと閉じないので頤に力を込めているのが見えます。これも治るのはこれまでの症例からすると自明です。術前の間延びした下顔面の印象が術直後には短くなって見えましたが、表情が作れなかったのですが、術後1週間ではは、力が入っていますが、下顔面にさらに締まりが見られます。どんどん良く変わっていくのがこの手術の経過です。
顔は前に出ていた方がバランスが良くて美しい。例えば顔の横幅があるつまり顔が大きい人は前に増大すると、顔が小さく見えるし、面長の人も前に増大するとフラットな面が減るので少なくとも中顔面は短く見えるのでは無いでしょうか?。本症例患者さんは美的観点(所謂美的センス)が豊富で一歩ずつ進んでいると見られます。今回私が施行した白唇部短縮術は直接的に面長を解消することになり患者さんもお悦びです。
毎回言ってきましたが、鼻の中に切開を逃がすと堤が無くなって不自然です。チェーン店系ではきれいに縫合できないので鼻の中を切ってしまします。外の傷痕は形成外科医が縫合すれば隠せます。一度鼻孔底の堤を無くしてしまうと、鼻の中が見えて奇異な印象となり、一生涯バレバレです。他院(チェーン店系)で受けてくるとすぐ判ります。
今後まだ改良点を検討していますが、先ずは今回の経過を診ながらタイミングを図っていきましょう。何より白唇部短縮術は静的形態だけでなく、動的形態つまり機能的なダウンタイムが過ぎないと、次へ進めません。ただし私はこの手術に於いてはベテランとなりましたので、標準的な経過は予想されています。