16年目にA美容外科大分院で開業したのですが、チェーン店なのかどうかを説明しようとしています。そこで前回広告面から書き始めました。続けます。
どちらにしても、広告は費用が高額です。そうなると一人では負えません。診療行為は人間がするので、いくら手抜きしたとしてもできる数は限界があります。つまり売り上げには限界があります。そこでビジネスの常識に則って、チェーン店方式が横行し始めました。昭和53年の標榜科目認可後からです。しかも地方大都市にクリニックを作れば受け皿となり、売り上げも増えます。
ビジネスモデルとして、美容医療機関の収支は、入るのは売上=自費は自由料金ですが、相場というのがあります。前回も説明した保険医療ですが、指定を得るのにも敷居が高いので、美容外科では持っている期間は少ないです。それというのも保険診療の金額は厚労省が決めていて、同等の自由診療と比べ売り上げは半分程度となるから美容整形屋は自由診療に走ってしまうのです。実際は保険診療での患者負担はその3割ですから、自由診療の6分の一程度になるので患者は増える一方となります。
さて出ていくのは、第一に人件費=医師、看護婦、受付嬢等ですが、少なくとも30%、多いところは50%近くになります。本来医師は専門医に認定されるくらいの年数(最低6年)と質(医師個人が責任を持って診療するのは10年目くらい)は形成外科を研修してから、美容外科も並行して学び始めるべきですから、それに見合った報酬は高くなります。看護婦も病院で一般病院では学べないので、美容医療経験の豊富な者はやはり高くなります。
但し給与が高くても診療を(主に手術となります。)それだけ早く、巧く、こなせれば売り上げは増え、比して他の固定費用は変わりませんから、それで収支が合うのです。通常医療にかかる流動的費用としては、他に医療材料が大きく、内科系では薬は差益が少なく、外科系では機材や糸はディスポーザブルで、結構高く通常売り上げの20〜40%にもなります。美容外科・形成外科医療は外科系ですが、そんなに材料費がかかりません。計算上10%以下です。むしろ美容皮膚科分野の機材は高く、レーザーとかはほとんど元が取れない様です。減価償却費に売り上げの20%かかっているクリニックもあります。
固定費は箱が第一ですが、これはピンキリです。平均的に10%前後でも固定ですから、売り上げの波によってはキツいものとなります。そして美容外科に於いては、なんと言っても広告宣伝費用が収支を左右します。これが言いたかったのです。
前回から述べて来た様に広告宣伝が集客を左右します。昭和53年の標榜獲得以前は美容整形医は本当は美容を付けられなかったし、形成外科医は名刺広告しかしませんでした。例えば父も看板には美容整形と書いていましたが、テレビCMでは銀座整形と称していました。昭和53年以降はみんなおおっぴらに、美容外科を標榜して広告を打ちました。前にも言ったかも知れませんが、父はその後も看板に美容整形と書き続けて、保健所が指導に来ると紙で’美容’を隠して凌ぎ、役人が帰ったら戻すというふうに毎月いたちごっこをしましたが、一年後には諦めました。
広告には費用対効果が求められます。ミニコミ誌やポスティング紙は地域を絞れば安いのですが、対象となる人口が限られれば、反映する売り上げ効果も限られます。逆に全国的テレビCMは二桁違う額となります。ところが、地方局のテレビCMは当然廉価でした。もちろんローカルで大分での件は後段で説明します。これまで全国的CMは、指を折って数えられる程の数少ないクリニックしか出し得ませんでした。銀座美容外科では東京ローカルしか打った事無いのですが、それでも15秒一本百万円は下らなかったです。全国ネットだとその5倍はするそうです。今ではインターネットが全国的、いや全地球的な広告手段ですから、テレビCMは二の手になります。今全国ネットでTVCMしているのは一チェーンだけでしょう。他は数院がローカルで打っています。もう一つ番組提供はもちろん高額ですが、TVCMに準じます。CMは名刺的でも、番組内容をコントロールして、美容外科の診療行為を見せることが出来ます。過去にはビフォーアフターを売り物にした番組がありました。Ot.美容外科ですが、出演していたI.H.院長は結構笑いを取っていました。それもそうでうす。シャブ中で最期は腹上施したくらいの、やばいキャラで有名な医師でした。
昭和53年当時頃から最近まで最も効果的な広告媒体は雑誌広告とチェーン店方式の併用でした。全国誌といっても広告効果がある雑誌です。美容外科では女性誌がいくつか特化していて、特にアンアン等は何十院も何ページ以上も並んでしました。女性なんとかも同様でした。方法論は前回説明した様に本の広告の形を取り、端に各院の名刺広告を載せます。チェーン店では一ページの左1/3に何十院もの名刺広告を並べました。試算しますと、カラー1ページが200万円として五誌を隔週で2000万円。一院で売り上げが月2000万円とすると、収支ゼロになりますが、地方大都市を5院出せば平均1000万円で5000万円。広告費は売り上げの7分の一となり、楽に元が取れます。こうしてチェーン展開方式では、院を増やしそれに応じて広告費も増やしながらも、パーセンテージは変わらないから、儲けはどんどん増えるのです。更に人件費を下げて、広告で集客すれば診療の質なんかはどうでも良くなり始めました。今現在もSの院長はそう言っています。Kクリニックは調子に乗ってやりすぎて、売り上げの50%を広告費にしたがために、電通に潰されました。
このように全国展開のチェーン店は広告も全国展開し、受け皿を増やすことで売り上げを増やします。でもそんなに美容外科医がいるのかといえば、上手な医師がそんなにいるはずがありません。よく非衣料従事者=一般人の中に間違った認識をしている人が居ます。医師はちゃんと国家試験を通ったのだから、みな同じレベルの診療技能を持っている筈だと思い込んでいる人です。大間違いです。まず現在の医師の診療技能はかなり高度化してしかも日進月歩です。ですから、専門分野を長年研鑽していなければ、知識も技術も持ち得ません。卒後に大学病院等で10年単位の研修と診療をして初めて力が付くのです。
でもチェーン店では実力は問いません。医事新報というすべての医師向けの雑誌があり求人広告欄がありますが、美容外科チェーン店のクリニックが並んでいます。条件はほとんど経験不問で、年2000万円目標とあります。研修制度完備というチェーン店もありますが、その場合入職当初数か月は給与があまり出ない制度です。でも逆に言うと数か月で稼げるように仕立てるのです。卒直後にも雇います。他科からの転向医も多く、逆に形成外科出身者は敬遠されます。形成外科医は知識に優れ技術も高い代わりに、金儲け主義を嫌うからです。
広告で患者を呼ぶ際には、何もかも書けないので、多い順みたいに売り上げの上がるものばかり載せます。勢い診療メニューは狭めても、来た患者をこなせばいいことになります。だから、医師の技量と知識は問いませんし、また患者さんの個性に合わせた診療なんかしません。そしていつも同じ様な手術をしていれば、さすがに慣れて、時間短縮はされます。いいですか?。計算してみれば判ります。広告費が売り上げの何十%を越えればその分、料金を上げるか、時間短縮して数をこなさなくてはなりません。相場があるから料金を上げれば患者は他に逃げてしまいます。結果的としては、いつもオートメーション方式で患者を物の様に扱います。人間には個性があって、元の形態も機能も社会性も様々なので、みんなに同じ行為をすれば、満足を得られない人が続出するのは当然です。これがチェーン店のやり方です。
やばい話しに逸れたので、何を言いたかったか判らなくなりました。チェーン店はいかに酷いかを説明しようとしていたのですが、私はどうなんだという話しでした。
A美容外科大分院は一応チェーン店みたいなクリニックですが、ほとんど常勤で廻していました。他に、4カ所程地方院がありました。チェーン店を模しているのですが、地方中都市での展開では全国展開のチェーン店の様な有用性はありませんでした。一度止めて次回地方中都市のチェーン店もどきでの美容外科としての話へ。