2013 . 6 . 21

美容医療の神髄Ⅱ-美容外科と形成外科-

今回は、美容外科と形成外科の異同について述べたいと思います。

確かに美容医療において、形成外科と、美容外科は車の両輪に例えられます。私は鳥の両羽と表現しています。「2枚の羽根を道具として飛翔しましょう。」という意味です。

形成外科、美容外科どちらも、形態的な改善を目的とする医学分野です。より美しくすることが目標です。違うのは、対象です。簡単にいえば、身体的に異常な状態を対象とするのが形成外科で、保険診療となります。身体的にも形態的にも正常範囲の状態を、より形態的に向上させる場合が美容外科で、自費診療になります。

例えば、外傷後の変形や、良性でも悪性でも腫瘍を治す時、皮膚表面や皮下などの変形すると目立つ部位は形成外科の対象です。生まれつきの体表変形(いまは奇形とはいわず先天異常といいます。)はもちろん、加齢による機能劣化を伴う顔面の変形にも保険診療が適応するものもあります。眼瞼下垂は身体機能低下=異常を伴う変形の典型的例です。正常と異常の境界は難しいのですが、医師の判断に任されています。例えば、加齢による形態的変化は誰でも起きるので、正常範囲ですが、身体的機能的異常に由来する形態的変化は、異常と判断される場合があるのです。実際には、美容医療のうちの1/3くらいが保険診療で、残りが自費診療になっています。一般的な美容外科診療については多岐に亘るので追々説明していきます。

ところで私は2枚の羽根を身に着けたいと言いましたが、一般にはどうでしょうか?。

大学病院の形成外科に所属すると、通常6年間は年長の医師について学びながら、症例を経験していくのです。もっとも大学病院や一般病院では美容外科の症例はほとんどありません。その中ではほとんど美容外科症例を経験できないのです。隠れてアルバイトで、美容外科開業医に行って、症例経験を積み重ねていくことができる医師はまだいい方なのです。

一方、大手チェーン美容外科や規模の大きい開業医に、他科から転業したり新人で入れば、いきなり美容外科診療を経験します。でも、どうでしょうか?、医師になって1年目、または美容外科も形成外科も診療したことがない医師でも、手術するのです。患者さんは知らぬがホトケというものです。

そもそも、医師になるための教育機関=大学医学部や医科大学では、形成外科の講義も美容外科の講義もゼロに等しいのです。解剖や生理機能の一部で、関連分野を勉強しますが、全身の一部です。したがって、卒後の研修、研鑽が重要なのです。

例えば、大学病院の形成外科には、眼瞼下垂の手術が多いです。新人の時から、上級の医師の手術を手伝い、教わり、そして何例目からは指導を受けながら、手術する。そしてその間に解剖や機能の計測法を勉強するのです。そんな段階を追ってやっと、いい結果の手術ができるようになり、素晴らしい結果が常時出せるようになるのです。もう一点、形成外科では、体表付近の外傷や病気を診療しますから、美容外科に関係する人体構造をこの目で見る機会が、唯一圧倒的に多いのです。例えば、フェイスリフトに必要な顔面神経の走行は、形成外科でなければ見るチャンスがほとんどありません。ちなみに多くの耳鼻科医は、穴の中を診る医師で、多くの眼科医は球を診る医師ですから、外鼻の解剖は耳鼻科医より形成外科医の方が詳しいですし、眼瞼の解剖と機能は眼科医より形成外科医の方が詳しいのです。ついでに言えば、私の医学博士の研究テーマは”一重まぶたと二重まぶたの構造の電子顕微鏡による描出”です。

そのようなわけで私は、形成外科で研修してよかったと思います。もちろん、美容外科も同時進行で勉強できたのは、さらに有効でした。

次回は美容外科における”美”とは?、美容センスとは?。実は経験が大事だが、いかに美容的な目で患者を診るかが、さらに重要だということを述べたいと思います。

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