2013 . 10 . 1

美容医療の神髄本編―美容医療の基本―その4 何故美容外科診療には形成外科診療の経験が必要なのか?。診療の前提となる知識:解剖、生理

前回前置きまでとしたのは、原則論を始めに提示したかったのです。今回は具体的に!

形成外科の診療では、特に顔面の、また体表のほとんどすべての部位の再建を主とします。つまり、見た目の(形態的な)治療も機能の治療も目的とするわけです。対象疾患は、形成外科学会が宣言した項目に従っています。やけど、体表の外傷、顔面の外傷(骨折も含む)、体表の先天性異常、瘢痕、手足の外傷および先天性異常、皮膚皮下組織の良性および悪性腫瘍、皮膚皮下組織潰瘍、瘢痕およびケロイド、その他です。これらの形成外科対象疾患のうちの多くが、美容外科の対象疾患と重なります。これまで何度か述べてきましたが、形成外科と美容外科では、対象患者さんが疾病者と正常者、費用が保険と自費という様に違いますが、目的は形態の改善ということで同じですし、形態の治療の為には、形態を知る、つまり解剖と生理機能の知識が肝要です。何度も言いますが、これらは医学部卒前教育では習いません。

では、形成外科診療で出会う様々な疾患から、美容外科診療でどんなに必要で役立つ知識が得られたかを、羅列してみます。

  • やけどの治療における、皮膚の解剖の知識や創傷治癒の仕組みの知識は、レーザー治療にも、ケミカルピーリング治療にも役立ちます。何しろやけどは浅い軽症から、深い重症まで治療しますし、皮膚の層構造を目で見て判断することが必要ですから、この目に皮膚の層構造をしっかり焼き付けているのです。
  • 顔面骨骨折の手術では、皮膚から骨に到るまでの構造を考えて、創が目立たない部位から、筋肉、神経、血管をよけて骨折部を覗き、骨を固定します。口の中や、下眼瞼の裏、髪の中や生え際からのアプローチは、そのまま、フェイスリフト等の手術に使われます。さらに皮下のすべての組織を目に焼き付けておけば、顔面のあらゆる美容外科手術に役立つのです。もちろん、骨格を治す手術は骨折の整復手術の経験がない人には出来る訳がないと思います。
  • 同様に、顔面等の外傷の修復では、神経や血管を修復することもあり、深い層の解剖まで頭に入れておかなければならないので、危険ゾーンを知っているわけです。つまり外傷では、危険ゾーンを傷めてくるので治すことが出来る。美容外科手術では、危険ゾーンを知っているから避けられると言う訳です。
  • 最近口唇裂、いわゆるみつくちの患者さんが減ったように感じますよね!。形成外科医が乳児期(1歳まで)にキレイに治すからです。しかしその際には、精緻な技術と、解剖の知識に基づいています。口の上の筋肉までできるだけ修復し、創跡は自然なラインにおき、鼻の下の長さも左右を合わせる。その上に前々回述べた形成外科的縫合をすると、判らなくなるのです。また口唇裂は、鼻も曲がっていますから、成人までに修復することが多いのですが、鼻の構造を実際に目で見て左右差を治すのは形成外科の真骨頂です。ですから、美容外科における鼻と口唇の手術は、筋肉や軟骨や血管の解剖を細かく知っている形成外科の独壇場であるはずです。但し形態に対する観点は美容外科診療の経験の中で学んでいくものです。
  • 先天性眼瞼下垂の患者さんは、新生児期(生後すぐ)に認識されるはずです。治療はやはり幼児期(3歳までが望ましいのは視機能発達に影響するからで、前にも述べました。)に初回をすべきなのですが、まだまだ、啓蒙が不足なのか、成人までに放置されるケースが多いようです。また、眼科に紹介されて一時しのぎのナイロン糸での引き上げをされて、成人までもたないケースも多く、成人後形成外科、美容外科を自分で探して受診したというケースも当院には、少なからずいらっしゃいます。先天性眼瞼下垂の診療の経験は、後天性眼瞼下垂のの診療にも直結します。近年では眼瞼下垂の患者さんは、先天性でも、後天性でも形成外科へ受診することが多くなっています。もちろん、眼瞼下垂の診療においては、上眼瞼の解剖と神経、筋の機能を学び、実際に目で見て手術していくので、知識は豊富です。そして、その知識は美容外科での重瞼術等の診療には欠かせないものです。これまで何度も述べてきましたが、一重瞼の多い日本人では、眼瞼下垂の合併が多いのです。形成外科における眼瞼下垂治療と美容外科における重瞼術等は、それこそ車の両輪のように、連動しているといえます。
  • ほくろの除去を希望される方は多いのですが、レーザーなら簡単?。まあそうですが、大きいものは跡が目立ちますから、手術をお薦めします。なぜかレーザーでの除去の方が安全だと思っている人が多いのですが、それは5㎜以下の小さいものに限ります。レーザーは、焼いてほくろを削り、孔は患者さんの創傷治癒力に任せるというものです。約20年前までは同様のことをメスで行っていました。現在では出血して厄介なのでレーザーが頻用されているのです。ところが大きめのほくろは、それだけ悪性化の率も上がりますから、早めに完全除去をした方がいいのです。この場合、形成外科では、悪性の可能性を調べるために手術するということで、保険診療になります。くり抜いた孔を縫い寄せるのです。その際、形成外科では、形態的に復する様に努力します。つまり念入りに手術すれば、創跡は見えなくなり、変形も来しません。但し、顔の部品の変形をきたしそうな部分の場合、形成外科の独壇場です。変形のきたさない部位からの皮膚の移動を行うのです。皮弁形成術と言います。先月に症例提示しましたので、ご覧いただきたいと思います。
  • ところで検査に出すと二年に1例くらい悪性が見つかります。その際は拡大手術となりますが、皮膚の悪性腫瘍はこうして早期に見つければ、怖くありません。形成外科には、悪性の疑いのある皮膚腫瘍、一見ほくろというものも多く受診します。いまや病院では皮膚科からの紹介も多いのです。私達も大学病院で形成外科診療をしていた際は、結構進行した皮膚悪性腫瘍の治療を行いました。実はここでも、様々な勉強をしたものです。大きく除去して再建する。この際解剖的に多くの知識を必要とします。それに私達は実際目で見て解剖的構造を目に焼き付けていました。例えば、鼻の頭にできた皮膚癌の一種,基底細胞上皮腫(皮膚癌は主に三種類が多く、転移率が低いので完治しやすい。)では、顕微鏡下での完全摘出が行われます。でも、直径1.5センチの全層の穴があきます。申しわけないのですが,その際、鼻の構造の観察ができます。皮膚、皮下脂肪、軟骨、粘膜の層の関係が眼で見て確認できます。鼻の美容外科手術では表面を切開なんかするわけないのですが、癌の手術では切ります。これは私達形成外科医しか見る事のできない分野です。耳下腺の腫瘍は耳鼻科や口腔外科でも見つける事がありますが、皮膚に浸潤したものは形成外科にくる事が多いのです。稀に悪性もあります。その場合顔面神経にも絡んでいます。癌なら当然神経も一緒に摘出します。神経は縫い寄せるか移植します。何より、顔面神経の走行をこの眼で見て再建するのです。何度も言いますが、顔面神経の細かい走行なんて医学部の学生時代には解剖しません。見た事あるのは耳下腺の手術をした事のある数少ない医者だけです。これは、美容外科におけるフェイスリフト手術に置いて、欠かしては行けない知識だと考えます。
  • 瘢痕、瘢痕拘縮、肥厚性瘢痕、ケロイド。難しい言葉を羅列してしまいました。
  • 他にも美容外科における形成外科の経験の優位性は、列挙すれば切りが有りませんが、要するに,美容外科診療における解剖、機能、生理の知識は、医学生時代には得られるものではなく、形成外科診療に置いて習得されるのです。形成外科診療に置いては、壊れてきた患者を治したり、壊さざるを得ない疾病を治す際に、形態を取り戻す技術を磨く事が求められます。その間に、余人には替えがたい能力を身につける事になるのです。

次回はさらに、形成外科が必要でも美容外科とはイコールではない事を、述べていきたいと思います。

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