2013 . 10 . 8

美容医療の神髄―「器用なんですね!」って、美容医療の基本というか..。

美容形成外科医の私は、患者さんによく言われます「先生器用だから上手なのですよね!。」私はそれに対していつも言います「違います。外科医の能力は,第一にてっぺん=頭、知識と経験が結果を作ります。そして、所見を基に、患者さんとコミュニケーションをはかる、つまり口と耳も道具です。第二に頭の前=視機能です。個々の身体は解剖学的知識に裏付けられた典型的な形態に限らず、変異、変形、疾病が有る。だから医療が必要なのです。手術をしていく際に目で見て把握していき、それに応じて対処していき、形態をどのように治すが外科医の能力です。第三に手です。手は脳が動かすのですが、神経、筋、知覚は手に有ります。これらは必ず加齢と共に衰えますが、培ってきた頭の能力があればレベルは保てます。つまり器用な行為は頭、目、手の連携で成り立つのです。

医者になりたての頃10年程年長の先輩が言いました。「僕は,小さい時から精巧な模型を作るのが好きで,今となってはいいトレーニングになったと思う。だから、器用なんです。」何言ってるのと思いました。「個人の美と模型の精巧度を一緒にすんなよ。」と言いたくても口をつぐんで、まあ第三の能力を自負するレベルなんだと哀切しました。

続けて、私は自分は器用だとは自負していません。ただし器用にいろいろなものを直せます。ただし治せるのは、知っているものだけ、判るものだけです。例えば、ラジオなら直せますが、携帯は直せません。腕時計のバンドは直せますし、電池は入れ替えられますが、壊れた目覚まし時計は直せなかったです。自転車のパンクやチェーンは直せますし、自動車のヒューズは変えられますが、オイル交換はできません。

要するに、手を動かしてできる事は、やり方を知っていることです。それは理屈:構造=解剖、仕組み=機能、動力法=生理などの経験から得られる知識です。ちなみに=の前は機械、後ろは人間を指しています。やはり確かに、機械と人間は似てはいます。先輩のいうのも一理あります。

でも、そこに抜け落ちている大事な観点がありますよね!。前にも述べましたが、人の容貌は人類60億人がずべて違います。だから、どうゆう容貌だから、どうしたいから、どうするのが適しているから、こうする方がいいですよ。これらの点での多岐にわたるやり取りが方法を選択させます。そしてやっと、私達が手を動かすことになるのです。はっきり言ってここまででかなりの労力を使います。でもそこが面白いところです。美容医療では実は、術前の計画が結果の60%前後を決めると言えます。そこで使用するのは頭、そして目、口、耳等五感です。手は時折りボディーランゲージとシミュレーションの際に使うくらいです。

本題に戻ります。いざ手を付けはじめると、手は考えて動かしているときもあれば、無意識に動いているときもあります。たとえば歩くときに足と腕を交互に出すよう意識している人はいませんよね。でもどこに行こうと考えてどちらに向かって歩くかは、意識していないと間違ってしまいますよね。同じように手術も、まずはデザイン通りに切開する際は、目と手が自然に動いています。あらかじめデザインを考えて書いておくからです。手術に至るまでの、計画が重要なのは先ほど述べましたが、あらすじはカルテに書いておき、術前に頭に入れておきます。込み入った手術の前には、前日ベッドに入ってから手術シミュレーションしてしまいます。夢の中でまで手術しているときもあります。だからいざ手術の際は、ほとんど自動的に手は動いています。ところが、術前の予想と違う状態や解剖的構造が著しく変異していたりすることもままあります。相手がいるスポーツなら相手に合わせてこちらが動いていかなければ勝負といえない訳で、その際に的確に速やかに対応できるかは、やはり頭の回転の早さがものをいう訳ですし、練習という経験が上達させるのは言うまでもありません。同様に手術時に引き出しの中にいろいろな知識を入れておくためには経験値がものをいいます。手先はちゃんと頭が指示するように動けばいいのです。手術はふつうそんな様に進行しているのです。

今回は美容医療の治療における″器用″とは何かを説明しました。手が動くための準備が大切なことも確かです。では次回は準備=美容的観点=センスともいう。この点をもう一度検討してみましょう。

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