2015 . 6 . 26

お勉強に励んでみました。−医者は一生勉強です。−Ⅰ

生涯一美容外科医を目指している私としましては今更ですが、「医師は一生勉強しなくてはいけない。」との父の言葉を思い出しました。そもそも、医師の師と言う字は、教師の師です。士はさむらい=悪と闘う武士ですが、師は人に優しい先生=先導師ですから、常に先端の科学的知識を得て、先端の技術を見いだす務めがあり、国家そして人類に貢献しなければならないと考えます。

いきなりまた、大上段に振りかぶって来たなと云われそうですが、たまたま思いついてブログのテーマにしてみたのです。と言うのも実は、銀座院で若い美容形成外科医と一緒に診療しているのですが、私は手術中にも前後にも診察中にも、彼らから質問を受けます。そこで、答えようとしても、その根拠が軽薄ではいけないので、念のため学術的な知識を調べる機会が多くなったのです。過去27年間の美容形成外科医の人生の間に、そういう時期は数々ありましたが、せっかくだからブログの読者にも知識を供給してみようと思った次第です。

そもそも医学の研究は今に始まったことではなく、医学は日々進歩していますし、その結果も年々報告されていて美容医療の分野でも同様です。特に欧米では、美容医療に対して忌避観念が薄いため、美容医学の報告がアジアに比べて格段に有用性が高いものが多発しています。

勉強や研究とは、まず文献検索から始まります。過去に世界中の医師が論文を書いて報告しています。えっ何のためにするの?、っと皆さんは思われるかも知れません。

一般的に科学とは、仮説を立て、理論的に実証し、実践したり、統計を取ったりして、結果を報告すると、新しい知識や方法が有用であることを、世界中に報告できるのです。報告者は科学者ですから、その内容と多寡が科学者としての名誉となり、名声や地位に繋がるのです。例え臨床医でも、診療して稼ぐだけでなく、医学的貢献が名誉に繋がる筈です。ましてや大学等の研究機関では、学術的レベルが国家からの費用の供与の基準にもなるし、大学や会社では報酬の判断材料の一部にもなり得るからです。医療では方法や知識には、特許や知的財産権は付与されません。守られるのは著作権だけです。医学の進歩向上は、国家やひいては人類の財産だからです。敢えていうと医療でも、自分が発案した有用な知識や技術や方法を、人に教えないで独り占めしようと考える医師がいないとも限りませんが、(父は報告していない自己流の治療法で稼いでいました。)どんなにいい方法でも、広報しなければ患者としては受ける機会がない訳で、何らかの口コミや広告がされます。したがって現代は、インターネットでの広報をすれば全世界に広まっていきますから、秘密の医療はあり得なくなって来ています。

ところで、どうやって論文を読むのかというと、様々な入手方法があります。でも世界中で一番多くの論文を載せている図書館というか、インターネット上の検索サイトがあります。USAのNCBI; National Center for Biotechnology Informationという機関で運営しているPubmedというサイトです。公益的で、非営利ですから、世界一多くの論文が収載されていながら、簡単に検索できます。もちろん洋語(主に英語、他の言語の場合は抄録abstractだけ英語)オンリーです。

それで、今日は何を教えてくれるの?。っと言われても、たまたま思いついた記事内容ですから、ごく一部の知識しか載せられません。今後も載せて説明したいと思います。今回は第一弾として、皆さんの多くに有用な論文を載せます。

Ophthalmology. 1992 Dec;99(12):1759-65.
Blepharoptosis induced by prolonged hard contact lens wear.
van den Bosch WA1, Lemij HG.
Author information
Abstract
PURPOSE:
The authors attempt to establish a relation between hard contact lens wear and upper eyelid ptosis.
METHODS:
This study consists of two parts. In the first part, the authors compare the unilateral or bilateral ptosis that developed during hard contact lens wear in 17 patients with the involutional ptosis that developed in another group of 73 patients. In the second part, the authors compare both upper and lower eyelid position in 46 patients who had been wearing hard contact lenses for at least 10 years with the position of 50 matched controls who had never worn contact lenses.
RESULTS:
The ptosis that had developed in the 17 patients who wore hard contact lenses was clinically similar to that caused by involutional levator disinsertion. The second part of the study shows that the prolonged wearers of hard contact lenses had upper eyelids that were lower by approximately 0.5 mm when compared with control subjects. This difference is statistically significant. According to standard criteria, there were at least 10 ptotic eyelids in the contact lens group versus 1 in the control group.
CONCLUSION:
The study findings suggest that prolonged hard contact lens wear may induce a lower position of the upper eyelid and eventually lead to ptosis through levator disinsertion.

いきなり、英文じゃあねえかよ!。分かんねえじゃねえかよ!っと言われるのは承知です。ですから、要約します。

1992年には、既に提唱されていたのです。簡単に云えば、ハードコンタクトレンズの長期装用で眼瞼下垂が多頻度に発症する統計的根拠です。これは抄録ですが、本文内容によると、危険率は約10年で3倍を越えるそうです。 これだけですが、とっても有用でしょ?。皆さんのうち、なんか年のせいでまぶたが重くなって来たかなあ?。仕方ないのかなあ?。と感じている方が多くいらっしゃると思います。そのうちハードコンタクトレンズを10年単位使って来た人は、原因がそれだ!って判ったでしょう。それだけで、疾病であることが証明されたと言う訳です。当然その方々は治療の対象になると云えます。これには医学的根拠があることが論文に載っていますから!。

ちなみに、日本の眼科領域ではこのような問題を検証している医師は稀です。だって、そんなこと考えていたら、眼科医の食い扶持であるコンタクトの処方ができないからです。当院には毎日来院されます。聴くと、眼科では何も云われなかった患者さんが大部分です。云われて形成外科に受信を奨められた方も少なからずいらっしゃいました。敢えて言うと、多くの眼科医は視機能の診療だけを学びます。眼瞼は機能と形態(美容)のバランスを求められますから、手を出さないの眼科医が多いのです。日本では美容的目的を蔑む観念があるためでもあります。

でも、上の論文の著者はオランダの眼科医です。欧米ではOphthalmic Plastic Surgery眼形成外科という科目があり、まぶたの治療をします。日本では、形成外科医が主体ですが、私達はまぶたの診療が半分を越えますから、さしずめ日本の眼形成外科の中心者と自負しています。それでは、眼科医に申し訳ないので、日本の眼科医の書いた眼瞼の論文を探してみました。あとで載せます。

Can J Ophthalmol. 2011 Aug;46(4):333-6. doi: 10.1016/j.jcjo.2011.06.010. Epub 2011 Jul 7.
Not only hard contact lens wear but also soft contact lens wear may be associated with blepharoptosis.
Bleyen I1, Hiemstra CA, Devogelaere T, van den Bosch WA, Wubbels RJ, Paridaens DA.
Author information
Abstract
OBJECTIVE:
The authors attempt to establish an association between prolonged hard and soft contact lens wear and ptosis.
DESIGN:
Single-center retrospective consecutive series.
PARTICIPANTS:
All patients between 18 and 50 years of age who were diagnosed with unilateral or bilateral ptosis between January 2002 and December 2005 (35 patients).
METHODS:
In a retrospective consecutive series, we included all patients between 18 and 50 years of age, with unilateral or bilateral ptosis between January 2002 and December 2005. Patients with congenital ptosis, ophthalmic surgery or disease, trauma, giant papillary conjunctivitis, unknown duration of contact lens wear, or muscular or neurologic disorders were excluded. We compared this study group to a Dutch reference population (the total underlying population from which the ptosis cases derive).
RESULTS:
The group included 35 patients: 20 (57%) (ages 18 to 50 years, average 37 years) had been wearing hard contact lenses for, on average, 17.6 years (range 6 to 27 years); 9 (26%) (ages 18 to 45 years, average 30 years) had been wearing soft contact lenses for, on average, 9 years (range 1.5 to 20 years); and 6 (17%) (ages 23 to 39 years, average 33 years) had no history of contact lens wear. The odds ratio for soft contact lenses was 14.7 (4.2 to 50.7; CI = 95) and for hard contact lenses 97.8 (22.5 to 424).
CONCLUSIONS:
This study suggests that not only hard contact lens wear but also soft contact lens wear may be associated with ptosis.

次に見つけた論文では、ソフトコンタクトレンズでも眼瞼下垂のリスクは高いというものです。ソフトC.L.では4年前に初見されます。やはり10年単位の装用で起きるということで、ハードでは3倍以上、ソフトでも1.5倍の罹患者の様です。本文が取り出せなかったので数字は不確かですが、リスクはあると証明された訳です。その上ソフトコンタクトレンズは眼科処方を経ない方が多いようですから、発見の機会が限られるでしょう。その点でも、眼科医への啓蒙と、医療材料であるソフトコンタクトレンズの徹底が求められると思います。先日偽眼科医が摘発されましたが、言語道断ですね。眼瞼下垂患者が何人も見逃されたことでしょう。

上段で触れた様に、本邦にも眼瞼の診療に熱心な眼科医がいます。世界的図書館=Pubmedにも収載されている程の重要な論文です。著者の一人である柿崎教授は、形成外科や美容外科の学会にも参加されていて、有用な意見を披露されています。ちなみに私の論文は、Pubmedには2冊しか載っていません。

Am J Ophthalmol. 2006 Jun;141(6):1092-1096.
Histopathology of blepharoptosis induced by prolonged hard contact lens wear.
Watanabe A1, Araki B, Noso K, Kakizaki H, Kinoshita S.
Author information
Abstract
PURPOSE:
To clarify histopathologically the structural features of blepharoptosis in prolonged hard contact lens wearers.
DESIGN:
Retrospective case-control study.
METHODS:
Biopsy specimens from identical sites at the levator aponeurosis and Mueller muscle from 15 long-term hard contact lens wearers were examined histopathologically (group 1). They comprised two men and 13 women with bilateral blepharoptosis ranging in age from 26 to 59 years (mean +/- SD, 44.4 +/- 10.70 years). The average length of hard contact lens wear was 25.4 years (range 12 to 40 years), and the average spherical equivalent refractive error was -9.100 diopters (range -2.825 to -20.375 diopters). We also examined specimens from 15 patients with involutional blepharoptosis who underwent levator resection; they comprised three men and 12 women ranging in age from 64 to 79 years (mean +/- SD, 72.3 +/- 4.38 years).
RESULTS:
All patients in group 1 manifested fibrosis and negligible fatty degeneration in Mueller muscle. In group 2, we detected mild fibrosis in Mueller muscle and fatty degeneration of the aponeurosis and Mueller muscle.
CONCLUSIONS:
Prolonged hard contact lens wear induces fibrosis in Mueller muscle and may result in contact lens-induced blepharoptosis.

9年前の京都府立医大の眼科講座の研究です。ハードコンタクトレンズによる眼瞼下垂患者さんの手術中にごくわずかの筋組織を採取して病理組織学的(顕微鏡で観察)検査をした結果です。上眼瞼挙筋の延長であるミューラー筋が繊維化と脂肪変性していました。つまりミューラー筋の脆弱化です。単なる老化による眼瞼下垂症では、ミューラー筋と挙筋腱膜の脆弱化が見られました。どちらにしても、これまで説明して来ました様に、切らない眼瞼下垂手術=黒目整形(NILT法)で改善が可能だということです。顕微鏡レベルでの手術を顕微鏡検査が証明してくれたと言うことです。

実はもう一つ、帝京大学眼科講座も長年眼瞼の研究を売りとして来た研究機関です。私も本を持っています。でも現在の最新の知見とは云えない部分もあるのと、画像を見るとやはり眼科の手術らしい。形態的に不自然で、当然閉じない。機能重視ですから仕方ないのかも知れません。だから、眼科で眼瞼の手術をしない方が。っという感じです。

Nihon Ganka Gakkai Zasshi. 2008 Oct;112(10):876-81.
[A case of blepharoptosis associated with long-term use of soft contact lenses].
[Article in Japanese]
Nemoto Y1, Morikawa K, Kaneko H.
Author information
Abstract
BACKGROUND:
Several articles have reported a growing number of acquired blepharoptosis in wearing soft contact lens. Although wearing hard contact lens is widely accepted as a risk factor for acquired blepharoptosis, there is a relative paucity of information on the risk posed by soft contact lenses.
CASE:
A 51-year-old female who had used soft contact lenses for more than 30 years complained of unilateral blepharoptosis. The affected upper eyelid demonstrated good levator function and high lid crease. Instillation of 5% phenylephrine resulted in resolution of the blepharoptosis. A transcutaneous levator resection disclosed thinning of the levator aponeurosis and showed good results postsurgically. A biopsy specimen from the levator aponeurosis and Müller muscle demonstrated sparse muscle fibers and negligible collagen fibers in the intermuscular space.
CONCLUSION:
Although the clinical features are similar to those of acquired blepharoptosis in wearers of hard contact lenses, the histopathological findings may differ from the results of blepharoptosis induced by prolonged use of hard contacts and involutional blepharoptosis as reported previously.

7年前の上記論文を要約すると、ソフトコンタクトレンズでもハードコンタクトレンズと同様に、眼瞼下垂症になるが、病理組織学的な所見はちょっと違う。そんなことはどうでも良くて、コンタクトレンズによる眼瞼下垂では、フェニレフリンテストで改善し、挙筋筋力(滑動距離)は正常である。これまで私が何度も説明して来たことです。先天性眼瞼下垂でないか、先天性眼瞼下垂症に後天性眼瞼下垂症が合併したのか、コンタクトレンズ装用の副作用または老化による後天性(腱膜性)眼瞼下垂症なのかを、治療法を選択するために鑑別することが重要だということにつながる証明です。論文で発表されて、反論がなければ、正しい医学的知識だと考えられます。

本日は、4通の論文の抄訳をしてみました。英語の文は、皆さんにはどうでもいいことかも知れません。私としては、内容が医学的知識を証明していることを書きたかっただけです。でも、聞き伝えであやふやな知識よりは、論文を読み直して性格な知識を示した方が安心でしょ?。

内容は私が何回も説明して来たことですね。ナーンだ結局、手前味噌な話じゃないか?、っと言われると、そうですとしか言えません。でも医学的科学的根拠が加わったでしょ?。安っぽいチェーン店系の美容整形クリニックとは違うのよ!。私達は職人ですが医学という科学に携わる医師です。今回のブログはその証明になったと思います。