2017 . 6 . 21

自然な奥二重=瞼縁が露出して開瞼が正常化。キツい目元が優しい目元となりお悦び!

症例は、典型的な一重瞼の先天性眼瞼下垂症。蒙古襞の拘縮も強く、Puffy eye で腫れぼったい。眼窩脂肪ヘルニアです。前頭筋が常時収縮して眉毛が挙がっています。

まず下の術前の画像をご覧ください。キツい目元と感じます。何がそうさせるかと言うと、開瞼に際して前頭筋に力が入って眉が挙がるからです。開瞼に際して眉が挙がる運動は脳が指令しているのですが、自律神経系の一方である交感神経がコントロールしています。交感神経は興奮状態とか戦闘状態を司る神経系ですから、精神的にキツい状態の時に亢進します。だから眉が挙がっていると怒っている表情に見えます。ちなみに形態的にも蒙古襞の被さりは目を隠していて吊り目に見せる為、キツい感じを増長させています。

ただし術直後はキリッと過ぎています。麻酔が効いているため眉毛が動かないからです。これはこれで睨んでいる様な表情になっています。

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術後1週間の画像を見ますと、パッチリとしました。今回術後3週間目の画像ではリラックスした目元が写りました。

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症例は24歳、女性。先天性の一重瞼=先天性の皮膚性眼瞼下垂症。挙筋機能=挙筋滑動距離が11mmと低下がみられる軽度の先天性筋性眼瞼下垂症。角膜中心間距離58mm(平均60mm)と離れていないのに、眼裂横径24mmで内眼角間距離36mmと目が離れている。つまり蒙古襞の被さりが多い。その結果蒙古襞が斜めに突っ張っている。この組み合わせは東アジア人特有の遺伝子型です。とにかく何とかしたいので私を受診しました。

用手的な下眼瞼圧迫で上眼瞼全体が膨らむので眼窩脂肪ヘルニアが判ります。フェニレフリンテストでは十分に開く。数字的に筋力の低下=先天性眼瞼下垂なのは横径が小さいからです。それならいつものやつ:眼瞼下垂手術切開法と4mmのZ-形成法での目頭切開の適応です。デザイン:アイプチでしわがいくつかあり、下のライン3.5mm幅で3.5mm幅の切除を予定しました。狭い二重=所謂奥二重のデザインです。でも第一眼位で瞼縁が露出する幅です。眼窩脂肪は処理する予定としました。一辺4mmの60度のZ-形成を蒙古襞の下端から稜線に沿ってしました。

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さて手術ですが、皮膚そして眼輪筋と切除していくと、眼窩脂肪が膨らんで盛り上がってきました。これがヘルニアです。眼窩脂肪ヘルニアは実はそう多くは存在しません。眼窩脂肪ヘルニアとは、瞼板上縁より下に眼窩脂肪があることで、量の問題ではありません。本症例では、下眼瞼圧迫で眼窩脂肪ヘルニアが診られ、術前にPuffy eye が診断されました。そこで手術の時間を用意しておきました。眼窩脂肪が瞼板の前にも乗っかっていると重瞼が固定できませんから、どけてみます。でも出て来てしまいます。次には焼いて収縮させてみました。かなりヘルニアする容量は減りましたが、まだ瞼板前に乗って来ます。そこで切除に入ります。挟んで切り取り、出血を止めるために断端を焼きます。これでやっと瞼板前面の上縁が露出できました。そこで眼瞼挙筋と皮膚を連結して重瞼を固定できます。重瞼固定は眼窩脂肪の再ヘルニアの予防の為の支えにもなります。

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術後経過=ダウンタイムの差ですが、今回は術後3日目の来院時も撮影させていただきました。上左図が術直後で、上右図が術後3日目です。眼窩脂肪はやわらかい脂肪なので、焼いたり切ったりして侵襲を加えるとすぐ浮腫みます。通常は術直後よりも48時間の方が腫脹等は亢進します。術後3日はピークです。

下図は術後1週間の抜糸直後と3週間後です。

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1週間ではパッチリ開き、腫れぼったさも解消中です。眼窩脂肪は軟らかい組織ですから、浮腫むと軽快に時間がかかります。ただし、開瞼が良好化し、皮膚も持ち上がり、瞼縁が露出しました。前頭筋が収縮しなくなり、眉を挙げなくなりました。少なくとも、見た目にはよく目が開いていて、眠そうな、怖い表情ではなくなっています。3週間目では無駄な力が入っていないで自然な表情です。力が入らないと優しい精神状態を表現している様に見えるのです。腫脹はこの2週間で更に軽減しました。結果重瞼幅が予定の奥二重になりました。瞼縁と皮膚が同高なのが奥二重です。

術前と3週間目の近接画像です。

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近接像ではとにかく目が大きく露出し、瞼縁も露出しています。目頭の創跡は赤いくの字の線が見えますが、肥厚はまだ診られません。目頭の角度も自然で、涙湖(目頭の赤肉)の露出も適切です。

#一重瞼で瞼縁が隠れている。#腫れぼったくて目が開かない。#眼瞼挙筋が弱い。#蒙古襞が被さり突っ張って邪魔している。という形態と機能は異常です。

一重瞼は機能的な異常を伴います。皮膚性眼瞼下垂です。そして、先天性や後天性の筋性眼瞼下垂症を伴う例が多いのです。機能と形態の両面を改良(=本来は正常化という意味で修正)する眼瞼形成術は、医療です。私達形成外科医が切開手術するなら、保険診療を受けられます。

Puffy eyeは、腫れぼったいという形態的損失ですが、重瞼が造れないという機能的損失も伴います。いや、そう言う場合に眼窩脂肪の処理が必要になるのです。腫れぼったいから脂肪の処理をするのでなく、重瞼を固定する為にPuffy eyeを処理する必要があるのです。ですから、Puffy eyeなら切開して、脂肪処理と重瞼固定に臨むべきです。

蒙古襞は日本人なら皆持っています。日本列島には弥生時代に大陸から蒙古系人種(天皇家を始めとした渡来系)の遺伝子が入って来て先住民と交配しました。でも日本は島国なので、明治維新までは他民族の遺伝子との交配が皆無に等しかったため、日本人のほとんどが蒙古襞を持っています。蒙古襞の程度には交配に依ってピンからキリまであります。一重瞼症例は強く、対して二重瞼症例は軽いのです。眼裂横径のサイズを計ると、(私は全例計っています。)平均1.5㎜の差があります。

蒙古襞の悪影響には、被さりによる眼裂横径の狭小という形態的損失と、上下が突っ張っている拘縮により開瞼を阻害し、皮膚性下垂(≒一重瞼)に連続するという機能的損失があります。形態的には一重瞼を二瞼にしたのに、蒙古襞が被さったままだと、不自然な形態になる場合が多いです。機能的には眼瞼下垂症を改善したのに、眼瞼の内側が突っ張って挙がらない事があります。この場合形態的にも吊り目になるから不自然です。

本来その意味で、蒙古襞の拘縮と被さりの改善は、正常化なので修正というのが正しいと考えられます。でも人類全体からしたら数%の異常でも、アジア人の中では半数に起こる異常なので機能的損失が認識されず、形態的(美容的)目的と捉えられますから、保険診療は認可されません。角膜が隠れる程の重症者だけが保険診療で手術出来ます。乳児期に角膜が隠れていると視力が発達しないからです。本症例は画像で見る通り角膜は露出しているから、自費診療になりました。

私は今でこそ、最高の機能と形態を作り出していますが、30年間眼瞼形成術を努力研鑽した賜物です。若い経験の少ない美容整形チェーン店や、形成外科から転向したばかりの美容的素養の希薄な医師とは一緒にしないで下さい。眼瞼形成術に於ける知識と技術、更に診断の適切度については、私を追随する医師は数少ないと思います。

医師は国家試験を通っても知識は最低限しかありません。専門科目の研修と診療で身に付けて行くのです。技術も個体差はありますが、(外科系と内科系の向き不向きもあります。)知識と経験に裏付けられます。したがって、ちゃんと大学形成外科で研鑽した美容外科医といきなり美容チェーン店に就職した美容整形屋では天と地の差があります。

たまに患者さんに、「医者ってみんな同じ様に出来るのでしょう?。だって保険はみんな同じ値段ですもの!」とか聴かれますが、大間違いです。料金は同じでも、その診療レベルはピンからキリまであります。ましてや自費診療の料金にも相場はありますが、市場原理で自由に付けられます。

じゃあ医者を選ぶのには、どうすれば良いのかというと、ホームページを含めてコマーシャルは誘引目的ですから、当てになりません。匿名の口コミはやらせが混じります。美容医療に於いては本当の口コミはしたがらないからです。

そこで私は、ブログを参考にすることをお奨めします。私自身はモニターサービス患者を選びません。こちらからお願いする事もありますが、基本的には患者さんの申し出に従います。したがって、私のブログ内にはバリエーションの広い患者さんの標準的な経過が載っています。しかも定期的に経過を載せますから、参考になると思います。今後も皆さんお楽しみに!