2018 . 4 . 4

小さな目の窓を、なかなか良いバランスの目元に出来ました。

数年前は眼瞼下垂手術と目頭の蒙古襞Z−形成術を多く提示していました。1年半前の症例等は来院患者さんがスマホで開いて「こうして欲しい!」と頼まれる程の評判です。ところが、数年来口周りの手術のブログ提示が急増して、毎週の様に提示してきました。最近眼瞼のモニター症例が少なかったのですが、先月に4例提示症例が続きました。私は術直後から定期的に経過を追って画像提示していきます。切開手術が主なので術直後はすごい画像となりますが、皆さんに経過を知っていて欲しいからです。その結果を参考にして手術スケデュールを立てる患者さんが沢山来院します。こうして術後3週間までの画像を提示します。

症例は31歳の女性。先天性一重瞼でアイプチではしわは出来ても引き上げはできない。しかも画像で見られる様にかぶれている。開瞼時に前頭筋は必ず収縮し、眉を挙げて目を開いている。LF10㎜と先天的に筋力低下傾向である。内眼角間(二重瞼者の平均34㎜)=38㎜、眼裂横径二重瞼者の平均27㎜)=22㎜、角膜中心間(平均60㎜)=60㎜と目は離れていないから、目の間が遠いのは蒙古襞の拘縮が影響している。だから横が小さいから開瞼力が不足するのは縦横のバランスとして筋力の成長不足と考えられた。そこでフェニレフリンテスト(点眼薬で一時的に眼瞼挙筋を強化するシミュレーション)をするとやはりよく開く。

先ずは術前と術直後の画像を見ましょう。

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ラインは左のアイプチの跡の5mm。前頭筋収縮(眉を挙げて)して目を開いてきたので、年齢の割に皮膚が伸展しているため皮膚を4mm切除することとした。二重瞼にして挙筋を縫縮するなら蒙古襞の拘縮を解除する必要があるため、いつもの様に一辺4mm60度のZー形成術による目頭切開を連続してデザインする必要があると考えました。

デザインの画像を下に、開瞼と閉瞼の画像を載せます。IMG_0971IMG_0972

最近は目尻側を跳ね上げません。目頭側はZ−形成をする際には繋げるので同幅の4㎜切除出来ます。Z−形成の縦辺は蒙古襞の稜線に引くのでよく見えません。下辺は下眼瞼に書くのでよく見ると見えます。

術翌日と術後1週間の画像を載せます。本症例は内出血が起きました。でも1週間後にはかなり吸収されています。メイクで隠しましょう。また術直後は腫脹で開瞼が阻害されていますが、術後1週間ではパッチリしています。いつも書いて来た様になんでも48時間がピークです。翌日は術直後より酷いのです。その翌日からどんどん回復します。

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続いて術後3週間の画像を二葉。眉が下がってはっきりした目元になりました。ダウンタイムは腫脹と内出血が主です。術後3週間では内出血は必ず吸収されています。でも腫脹はピーク時(48時間)の25%程度は残っていてその為に二重が広いです。

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近接画像で比較しましょう。術前、術直後、術後1週間、術後3週間です。

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目頭の変遷に注目!。右眼瞼の目頭の指す方向と、左眼瞼の目頭の指す方向が違います。右左に比べてやや上向きを指しています。挙がりすぎています。でも上の術直後画像では左右同等です。術後1週間の画像で挙がり始めました。その後の2週間でさらに左だけ上向きになりました。。

実は、術後3週間で来院してもらう目的はこの点にあります。目頭部の傷跡の瘢痕線は、術後に拘縮します。本来拘縮とは傷跡の線が長軸方向に短縮することを言います。自然な反応です。形成外科医は傷跡を綺麗に縫合する唯一のプロです。真皮縫合が予防します。口や眉下の項目でいつも強調しています。ところが、目頭切開では(眼瞼手術一般でも)真皮縫合をしません。皮膚が薄いので、どんなに細い糸でも表から引っ掛かりが見えてしまうからです。一時期やってみましたが、透けましたので辞めました。だから目頭切開では肥厚性瘢痕が起きやすいのです。

そして、Z-形成法で目頭切開を行い皮弁を入れ替えると、上の辺が拘縮することがあります。すると、手術時より数週間後の方が目頭が上向きになります。逆に真ん中の辺が拘縮することもあります。すると下向きになります。どっちが起きるかは不明で、創の治り方の僅かな差のバランスと手術時の挙げ方のバランスで起き得るのだと考えられます。何れにしても肥厚性瘢痕の拘縮で起きるので、術後3〜6週間に起きてきて、術後3ヶ月には治り始めますから、手術直後の位置に戻ってきます。これまでの症例を見れば判ります。だから中期的経過の画像提示が必要なのです。

眉を挙げる不随意運動は眼瞼下垂症に於ける代償性反射神経の働きです。本症例では著明改善しました。画像を見れば明らかです。眉を挙げる前頭筋が覚醒行動時の開瞼の補助の為に常時収縮していますから、疲労します。筋緊張性頭痛を生じます。この合併症状で来院される患者さんの方が多いくらいです。自律神経系の一方である交感神経の過剰状態(いわゆるストレス状態)も起きます。毎回書いて来た様に、加齢性の自律神経眼瞼は下垂症の代償性合併症として起きます。ですから眼瞼下垂症の治療後明らかに症状が改善します。本症例もその様な経過をたどっています。

一重瞼と二重瞼では蒙古襞の被さりと突っ張り(拘縮)に差があります。だから一重瞼を二重瞼にする際には蒙古襞の程度を一重瞼の標準から二重瞼の標準に変えないと不自然な形態になります。本症例の患者さんは来院するなり先ず第一に目頭の蒙古襞の拘縮解除を求めてきました。理解力があり知性が高い人です。これまでのブログをご覧になっているからでもありましょう。良い結果を見れば自分も良い結果を求めたくなるのでしょう。患者さんはブログの「完成!」症例を見てから来院されるので、時期を同じくして初診患者が殺到します。

私は一人ひとりをじっくり診察して、細かく説明していきますから、手術に至って数週間の後に素晴らしい結果を得ると、患者さんはお悦びです。比較的経過が早い方ですが、肥厚性瘢痕の経過と目頭の向きは術後6週間目がヤマです。お楽しみに!