2019 . 10 . 28

鼻唇角下制術はプロテーシスで確実!

シリコンプロテーシスは、部位により標準的な安全性が確立しています。シリコンはケイ素と言う元素を化合した物質です。ケイ素は石の主要元素で、他の元素が混じっていろいろな色や硬さになります。シリコンも有機物が化合されていますが、結合が強固なので生体内では分解や遊出をしません。つまりシリコンは生体内では安定した物質なのです。しかも硬さは化合時の鎖の長さで変えられます。

シリコンは生体内で安定しているので、皮下または皮下組織内にある際はいいのですが、皮膚が弱くなったり、薄くなったりすると露出する可能性があります。少数例ですが危険性がある訳です。でも私が成功すると考えたシリコン挿入術で出て来た事はありません。

そこには、経験と解剖に基づいた理論の有無が求められます。いくつかの要素が影響します。部位と量と材料を形態です。先ず部位ですが、鼻は鼻スジを作るのは安全とされています。鼻尖は年齢と主に皮膚が薄くなるので加齢で危険性が高まります。私は12年前から鼻尖には入れません。昔父が入れた鼻尖のプロテーシスが、約25年後に鼻尖から出た2例の患者さんは私が修復しました。残念ながらお二人とももう寿命を全うされました。焼き場で焼失しますが、顔は変わらないであの世に持っていけて良かったのでしょう。

そこで本題の鼻唇角プロテーシスですが、皮膚が厚い部分で、しかも皮下でなく骨の上の約5㎜の深い部に挿入しますから露出はしません。硬さですが、そこにしても軟らかい材料が安全です。だいたい輪ゴムの硬さです。軟らかければ何らかの圧迫や動かす力が働いてもたわんで戻ります。硬いと先端が皮膚を圧するのです。

容量の問題ですが、今まで二人、父が無理だと言っているのに、「自己責任ですからどうしても大きくしてみたい。」と頼まれて額と鼻に大きな物を入れたら出た事があります。二人とも精神疾患でした。部位ですが、他に額は安全ですが時に折れ曲がります。こめかみは厚過ぎると危ないので3㎜以下にしています。頬前の丸みに入れてクマ予防が出来ますが、神経の処理が難しいのと取り外しが難しいので滅多に使いません。頤はちゃんと骨の上に密着させないと口の中から出てくる危険性があります。現在鼻は、必要に応じて鼻スジにシリコンプロテーシス、鼻尖は軟骨移植しかしていません。

何か危なさそうな説明を記載しましたが、要するにシリコンプロテーシス挿入術は上手に作れば安全ですが、それには解剖の知識と手術の技術と経験が要されるのです。昨今の若い非形成外科医は危ないから施行しないか、チェーン店でもさせない傾向にあります。かといってある程度の(とはいっても10年程度)キャリアーを積んでも美容の観点が身に付いていない(ビジネスクリニックは忙しくて患者さんを診ないし、カウンセラーが視るだけ)ので、患者さんに合っていなくて不自然な形態なことが多いのです。

上に書いたように危ない目に会っています。ご存知の様に父は結構やりすぎの人でしたから、まずい場面を見てきました。だから私は反面教師として危ないことをしません。いやたくさん見てきたから危ない一歩手前を知っているから踏み留まることができるのです。これも経験値の一部です。そうです。私のキャリアーは産まれながらで、中学生時にはよく銀座美容外科に見に行っていました。もう45年以上になります。本当に美容医療に携わったのは医師になってからですが、父と共に15年。私はもう32年の形成外科と美容外科の診療の経験を積んできました。

もう一度言えば、鼻唇角プロテーシスは安全で自然な形態を作り出せます。一例だけ、表情時に邪魔になると言われて取った症例があります。口を尖らせる時に当たる感じだったそうです。他にはありません。なお、軟骨での鼻唇角下制術を検討した事はありますが、一枚1㎜で3枚重ねにしても3㎜。足りなさそうなので辞めました。

症例は21歳女性。いきなり鼻唇角プロテーシスを希望して来院されました。初診アンケート=問診票の主訴の欄に書いてあったのは初めてです。カルテを見ると診察所見は軽い。私は精密な診療を心がけてきましたが、このように解りやすい症例に対してはスムースに進めます。鼻唇角を測り、60度。今より鼻柱基部の位置を4㎜下げるのが限界でしょうとの記載しかありません。

実際に画像を見れば判ります。今回は術前、術直後、翌日の画像を解りやすい側面から並べます。

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白唇の前面の投射線と鼻柱の交わる角が鼻唇角です。上左図の術前では約60度、上中図の術直後では約110度、上右図の翌日には約100度です。術直後には局麻が、翌日には腫脹が影響します。腫脹(腫れ)は48時間後がピークです。上は鼻尖まで、下は赤唇まで腫れました。白唇は当然腫れたので鼻唇角が減って見えます。下がり具合は術直後が出来上がりの目安です。

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斜位像でも、角度が判ります。よく見ると実は、腫脹だけでなく内出血が顕在化しています。翌日には腫脹が赤唇をを外反させています。上口唇(白も赤も唇です)が前突しています。私の十八番の口唇の手術はしていません!

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正面像では鼻唇角そのものは見えません。逆に術前は見えなかった鼻柱基部(=鼻唇角)が手術翌日には内出血で見えます。リップを引いていますが白唇が腫脹でモッコリして来ました。

IMG_2286IMG_1402IMG_2303更に下面像では目立ちます。術前は低かった鼻尖が、術直後は押し上げられて高く見えます。ところが翌日は白唇の腫脹に埋まって低くなって見えます。何より鼻柱から鼻唇角に架けて内出血が顕在化しています。敢えて言うならここがプロテーシスを挿入する為の剥離腔ですから、プロテーシスの形を反映しています。私だけ(看護師も?)が知っている形です。

それにしても内出血が皮膚にはっきりと顕在化するのは初めてかと言っていいのではないでしょうか?。上に書いた様に鼻唇角プロテーシスは皮下深く剥離します。下はANS,Anterior Nasal Spineという骨の上、前は鼻柱の鼻翼軟骨内側脚の間。側方にも軟骨がカバーしています。どの部位も組織が二重にあります。

でも心配はありません。皮下に内出血が起きてもこの部位は血行が良好なので、早く吸収されます。そして皮膚そのものにはダメージが残りません。腫脹の軽減に時間がかかるかも知れませんが、血腫では無いので確実に治ります。

抜糸時には形態的にも見えてくるでしょう。お楽しみに!

術後1週間で抜糸しました。

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まだ内出血は赤く見えます。でも腫れはかなり取れました。

IMG_2439IMG_2442鼻唇角の鈍角化は成立しています。患者さんは満足されています。

続いて術後1か月です。

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鼻柱部の内出血は吸収されましたが、影が見えます。鼻柱は両側に鼻翼軟骨内側脚があり、中央は溝になっています。プロテーシスはそこには入っていません。しかし、鼻柱基部が下方移動すると、正面視時に鼻柱全体が下方移動して見えます。

IMG_2780IMG_2781斜位像でも側面像でも、鈍角が保たれています。今回の画像上では赤唇に綺麗にメイクされていてしかも外反して、頤と口唇と鼻の前後関係、つまりE-ラインが整っていて、白唇が外反しているのに鼻唇角が喰い込んでいないから品がありながら可愛い口元が演出されています。

次回術後3ヶ月で診ます。お楽しみに!

下に各方向の、左に術前と右に術後3ヶ月の比較画像を並べます。

IMG_2288IMG_3571右斜位像では、術前にあるような鼻唇角の食い込みは目立たなくなりましたが、術後でも鼻柱基部は見えません。

IMG_2290IMG_3574左側面像では、鼻唇角の角度は鋭角から直角に近くなりました。また鼻尖の高さが増えています。
IMG_2285IMG_3569正面像では、術後も鼻柱基部は見えませんが、鼻柱が下方になったので、鼻柱から鼻尖にかけてのカーブが綺麗なダイヤモンド型の鼻尖になりました。
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下面像では鼻尖が高くなったのが明らかです。結果鼻孔の形態も綺麗になりました。この手術では、たまに起きる内出血と白唇への腫脹以外にはダウンタイムも軽く、傷跡も見えません。

またこの場合、形態は量的な問題ですから、前に提示したように追加して増やすことはできます。安全性のために、まずは適切な量を入れて、皮膚皮下脂肪の軟部組織が伸展したら一回り大きなものを入れられます。組織を育てるのです。その場合さらにダウンタイムは短いです。先日症例を載せました。

鼻唇角プロテーシスではいきなり大きいのを入れると危ないですから育てる方法が安全です。もっとも鼻背でもいきなり大きいのを入れたら危ないです。父は昔、鼻プロテーシスの暑さを3㎜→5㎜→7㎜→9㎜と増大したことがあります。でもある時11㎜をしらさすがに孔が開きそうになり戻したことがありました。

ちなみに他の患者さんで鼻唇角プロテーシスでも父が4回増大したら、華麗で皮膚が菲薄化して傷が開いたことがありました。過ぎたるは及ばざるが如しでした。私は安全性をとって少しずつの増大術をしています。

ただし本症例ではその話には到りませんでした。視ていますかね。

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

料金も提示します。鼻唇角プロテーシスは15万円+消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。