2022 . 10 . 3

嬉しくも次々と載せさせてもらえます。切らない眼瞼下垂手術は適応次第。明るい患者さんに似合います。

切らない眼瞼下垂手術は当院のオリジナルです。いや本当は真似たのですが、この十年以上の間に私と池田医師が手を加えて進化させてきて、結果の安定性と持続性の向上を得て来て、今や定番の手術になりました。

NILT法は、眼瞼結膜を介して糸を通し、眼瞼挙筋の先端のミューラー筋と腱膜を瞼板に縫い付けて、瞼板から外れて来た挙筋腱膜断端を瞼板に固定します。瞼板上縁で糸を結んで強化したら、その糸を前に出して二重を造ります。そこで、眼瞼挙筋を瞼板に繋げる際に、確実に瞼板をすくう事が肝要です。挙筋側は腱膜は腱ですからコラーゲン繊維が密で、糸は外れません。どこでもそうですが、糸での手術は、糸が切れたりほどけたりするから外れるのではありません。糸が皮膚の裏側や筋から外れてずれていくのです。だから組織への掛かり方次第です。

瞼板は更に硬いコラーゲン繊維の塊ですから抜けないのですが、瞼板は厚さ1㎜しか無いので、瞼板の前から針を通して、もし裏側の眼瞼結膜から糸が露出したら、眼球に当たってやばい訳です。かと言って瞼板に触るだけでは抜けて、さすがに外れてしまいます。硬い材料は糸を通すのに力加減が難しいので、硬さを感じながらゆっくり通していきます。術者(私)はその数十秒は息を止めて、力を加減しながら通しますから、私は低酸素で倒れそうになった事もありました。幸い手術室には酸素ボンベがあるので、直ちに吸入して何事も無かったです。ですから今私は生きています。ブログも書いています。その後は一遍息を抜きながら通しています。

眼瞼下垂症に対する診療が、現在の様にポピュラーに展開して来たのは、松尾先生のお陰ですが、私も手を貸しました。平成9年に父がJSASの会長で主催した際に、私が1時間もの講演をさせてもらいました。当時JSAS(二つある日本美容外科学会のうちチェーン店系の非形成外科医の加入する側)に参加している医師群は、形成外科のトレーニングを受けていませんから、眼瞼下垂症の診療、特に手術の経験が皆無に等しかったので、聴衆は感動し、講演後は更に教えを請う物が続出し質問攻めに会いました。その後徐々に彼等は手を付け、今やほとんどのクリニックの診療メニューに眼瞼下垂手術が載っています。でも切開法でも綺麗に開いていなかったり、切らない眼瞼下垂手術では直ぐ後戻りした症例が多発しています。結果的に当院に修正を求めて殺到しています。その際眼瞼結膜を見れば、糸が掛かっていないのが判ることも多くあります。そもそも彼等は診察がテキトーですから、切らない眼瞼下垂手術の適応でない患者さんをも手術してしまいます。先天性後葉性眼瞼下垂症患者には意味がないのにです。残念ながら彼らは診断法さえも知りませんからね。

もう一度眼瞼下垂手術の意味を前葉と後葉に分けて説明します。前葉は皮膚眼輪筋。後葉は眼瞼挙筋と眼窩脂肪です。どちらも第一眼位(顔面正立位で正面視)が基準です。

前葉は、第一眼位での瞼縁との高さの差が問題点で、前葉が上にあれば二重瞼でよく開く。瞼縁に前葉が被さっているのが前葉性眼瞼下垂です。先天性でも加齢による後天性でも、前葉は埋没法や切開法で二重瞼にして持ち上げることで治せます。

後葉のうち眼窩脂肪はいわゆる腫れぼったさの原因ですが、重瞼線の上にあれば開瞼には影響しません。一重瞼ではまれに、瞼縁より落ちている症例があり、Puffy Eyeと称されます。逆に挙筋が外れた後天性後葉性眼瞼下垂症では、眼窩脂肪が引っ込んで窪み目を呈することがあります。

さて本題です。開瞼を司るのが上眼瞼挙筋です。目を開く筋肉です。日常の覚醒時の活動時は、無意識に収縮しています。例えば歩く時に、手と足をどの順番に動かそうと考えないのと同じです。上眼瞼挙筋の収縮は、三叉神経からの信号で脳で自律的に調節されています。眼球の向き、つまり視線の方向も影響されます。また意識的に目を開く(ひんむく)際は収縮力が強まります。逆に目を細める時は、収縮力を弱めますが、目を閉じる眼輪筋も協調運動します。こう考えてみるとお解りかも知れませんが、眼瞼挙筋の収縮力は情動に影響されています。なぜなら情動は自律神経系(交感神経と副交換神経)の働きに直結します。そして自律神経が上眼瞼挙筋をコントロールしています。

後葉性眼瞼下垂症には、主に二つの病態があります。先天性とは、生来上眼瞼挙筋の筋力が弱い病態で、筋の短縮を要します。程度により手術法が多岐に亘りますが、切らない方法では短縮できないので効きません。挙筋筋力は、瞼縁の位置を目を閉じたところから最上視したところまで測って調べれば解ります。その正常値は12㎜以上です。後天性後葉性眼瞼下垂症は眼瞼挙筋が伸びて、瞼縁の硬い部分の瞼板に筋力が伝わらなくなっている状態です。所謂腱が伸びた病態です。加齢でも生じますが、コンタクトレンズ装用では進行を早めます。筋力そのものは温存されている場合が多く、一生懸命力を入れれば上も見えますが、逆に正面視でも力を入れている人が多く、代償的に前頭筋が収縮して、眉を吊り上げている反射運動が起きている症例がほとんどです。この場合、上の述べたように無意識に力が入っているので、交換神経が常に亢進していることになり、多種の自律神経症状を伴うようになります。

切らない眼瞼下垂手術は、後天性後葉性眼瞼下垂症の眼瞼挙筋と瞼板を、眼瞼結膜側から糸で繋ぎ戻す手術です。元来の正常な解剖学的構造に戻すのです。通常この効果は半永久的です。その糸を表に出して結び、重瞼線を再建することも同時にしましょう。後葉が挙がっても前葉は挙がらないので重瞼が狭くなりますから、私は常にお奨めしています。今回もこの様な症例です。

症例は45歳女性。これまで何ヵ所かの美容医療機関で手術を受けてきました。当院にも14年前から罹り、私は昨年初頭からいくつかの手術をさせてもらっていました。先月眼瞼の希望を述べられました。重瞼は生来ですが、十数年前に埋没法で強化しています。そして加齢で皮膚が伸展して、重瞼幅が狭くなってきたので広げたくなったのです。患者さんは明るい女性で、はっきりした目元で広めの二重が似合うと診られます。また後葉は弱っています。

早速片側眼瞼にフェニレフリンテストを施行しました。約1㎜挙がりました。上の説明に載せ忘れました。後天性後葉性(数字は載っていませんが、挙筋筋力は正常でした。)眼瞼下垂症の症例には、フェニレフリンという散瞳剤の一種を眼瞼結膜に挿すと眼瞼挙筋を強化して、あたかも切らない眼瞼下垂手術の挙筋縫合時の様に開きます。上に書いた様に、意識しないで力の入れ具合が同じなら、点眼した側が点眼した側より開瞼が向上します。切らない眼瞼下垂手術のシミュレーションになります。

フェニレフリン点眼の時点で、約1㎜差がつきました。そのままブジー(二重のシミュレーションのための細い棒)を当てると、既存の重瞼線の約2㎜上に当てて見せると気に入られました。

でも手術中は、眼瞼挙筋を縫縮した時点で座位にして、見ながら重瞼線を確認して決めましょうとなりました。なお前頭筋収縮に因って眉を上げる癖が止まらないので、同時にボトックスを使用しました。

画像を見ながら説明します。

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上に術前の遠近二葉。左の遠景では力が入っていません。右の近景ではカメラが近づくので挙筋収縮が増えています。眉はまだ挙がっています。

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近接画像で角膜(黒目)の上に瞼縁が2m以上載っています。後天性後葉性眼瞼下垂症です。

IMG_2090術直後の画像です。眉は下がっています。目の開きは明らかに向上しています。

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重瞼線幅は、挙筋を縫縮した後に座位にして鏡を見せながら、ブジーを当ててマーキングして決めました。道具は滅菌済みです。既存のラインの2.5㎜上にしました。2点掛けました。

すると、僅かな腫れで2点がずれたのでしょうか?、既存のラインに左右差があったのでしょうか?。左の内側の点が高かったと見えます。

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初回手術の4日後に付け替えました。1週間以内ですから、右の内側の、表に出して結んで埋めた糸は、仰臥位では透けて見えましたから、摘んで簡単に切れました。その後1㎜下げてMT法で重瞼だけを再建しました。

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眼瞼挙筋を縫縮して結紮した糸は残すので、開瞼は変わりません。むしろ初回手術後は疲れて開いていないので、4日後の方がよく開いています。重瞼ラインはカーブが流れています。

今回術後4日まで画像提示しました。今後経過画像を加筆していきます。お楽しみに!。

IMG_2468初回NILT手術から2週間を経ました。ラインが流れて開きも良くなったと感いるそうです。 BT Xが一部足りないと仰る。歌唱を趣味とするので眉を上げる癖があるそうです。

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近接画像ではまだ左外がやや強いのが見えますが、ラインは気に入って下さいました。

術後1ヶ月です。

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ラインは気に入ったそうです。

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左中外1/3点がカクッとしているのは糸がしっかり効いているからです。徐々に浅くなり得ます。

術後3ヶ月でお悦びの声を聴きましょう。

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お悦びですが、次の話題に移ります。

当院では厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ブログを掲載しています。 医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。

症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の説明も加えます。NILT2点法は、消費税込みで両側22万円、片側では11万円+税です。今回の様な修正術は6ヶ月までは費用負担はありません。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。