昨今SNSが患者さんにとっても、医療者にとっても有用です。画像を提示出来るからです。私はこの様にブログを多用してきました。それにブログでは多くの文章を書き加えられます。それも医学的な”学術”的な”知識”です。美容形成外科は医学です。ですから、読者の皆さんが読んで下さると、予め正しい知識を知って来院されるから、さらに有用です。そして私はブログに、画像を経時的に追って載せています。もちろん改竄はしませんし、撮影条件も出来るだけ一致させていますから、信用されてます。たまに合併症を起こしても、すっ飛ばさないで載せて、処置後の改善も載せるから、患者さんから逆に「その場合でも治せるなら安心ですね?!。」と云われたこともあります。
ところで日本美容外科学会,JSAPSで定説となっている説が”学問的知識”と言えます。JSAPSは厚労省が学術的裏付けを得るための日本医学会に加入しているからです。そして目頭Z-形成法は、JSAPSで定式とされてきました。さらに言えば先天的な重症例には、形成外科医療として、ダブルZ-形成法であるMustarde法が定式とされています。この様な知識と技術の研鑽は形成外科医でなれば身に着けられません。そもそも美容外科のチェーン店は、新人を雇ったり、他科から転科してきた医師を雇ったりいました。見よう見まねで診療をさせるだけですから、医学的知識は叩き込まれません。代わりにビジネス(稼ぎ方)を叩き込まれます。ちなみに最近、チェーン店のHPに載る各医師の履歴に、形成外科出身者が増えましたが、皆在籍4年以内です。本来は6年以上研修しなければ、知識も技術も身に着きません。学問は積み重ねですから。一般人でも、小学校から中学校、高校、大学と知識を積み上げて来たはずです。専門分野では深く詳しい知識を要しますから、付け焼き刃では学問的な医学的な対処は不可能です。こんなところにもチェーン店には、ビジネス的な姿勢がありありと反映しています。
口を酸っぱくして、目頭切開術では蒙古襞の切除してはいけないと公言してきました。蒙古襞は目頭に被さって邪魔ですが、視界を妨げる程でなければ、退けなくて良いのです。ただし、蒙古襞は拘縮=突っ張りを生じていますから、目を開く際に阻害します。内側が挙がらない原因となっています。ですから、拘縮の解除が目頭切開の主目的となります。それにはZ-形成法が定式で有用です。Z-形成術は、形成外科医療に於いて使われる拘縮解除の基本的手技ですが、細かいデザインを手技は難しく、知識と技術の積み重ねが必要です。ただしそれでも、これはブログに何度も書いたり描いたりしてきましたが、中学生が習う幾何学で計算すれば、一般人でも簡単に理解は出来ます。逆になんでチェーン店の医師が理解出来ないのか不思議です。
症例は、47歳男性。眼瞼を開大したい希望で来院されました。診察します。先天性には奥二重瞼だったそうです。先天性前葉性眼瞼下垂です。加齢と共に上眼瞼の皮膚が伸展してきました。後天性前葉性眼瞼下垂が進行しました。LF,Levator Fanction、挙筋筋力(正しくは挙筋滑動距離)は15㎜と、挙筋筋力は正常で、先天性後葉性ではない。視力は正常でC.L.装用歴もなく、後天性後葉性眼瞼下垂症は加齢により徐々に軽度は進行した模様。内眼角間34㎜:眼裂横径29㎜:角膜中心間65㎜と眼窩が解離して、蒙古襞の拘縮は診られる。顔の横幅が最大160㎜ですから、相対的に眼裂横径が小さいので、横が小さいから縦も開きにくいのです。つまり奥二重と蒙古襞の影響での前葉性眼瞼下垂症が主体で、加齢に因る後天性後葉性眼瞼下垂は軽度進行中です。
プランを提示しようとする間もなく、患者さんは「なんとか大きくして下さい。」「時間は取れますからなんでもやって下さい。」と仰ります。こちらとしては、順序を考えなければ進められません。三つの手術を適応と考えます。1、眉下切開(切除)で先天性に加齢が加わった前葉性眼瞼下垂症を治す。2、蒙古襞の拘縮は前葉性の原因なので、目頭切開(Z-形成)は必要となる。3、眼瞼部での挙筋前転はその後の経過を診て、前葉性の改善の追加も検討できる。
1は保険適応で先行して、目頭の上から目尻の上までを、眉を挙げる7㎜切除が適応と考えた。1週間以上明ければダウンタイムが過ぎて次に進める。2は定式の一辺4㎜のZ-形成法が適応となります。3は保険適応としても、同一術野(部位)の手術は、保険療養規則上では、3ヶ月以上空けないとならないと説明した。
実は眉下切開は保険適応ですから、そのための画像は撮っていませんが写っています。
術前の眼瞼部画像。上左図は正面視、上右図は下方視。眉下後ですから、上下に視線を動かしても眉が挙がりません。これは眉下の効果です。蒙古襞は拘縮しています。
近接画像でデザインは撮り忘れました。そこで下に使い回しの机上の図。
図は左側(向かって右側)眼瞼のZ-形成の机上の線画。図の左側が術前、右側が術後。説明すると、cabとdbaの二つの三角形を入れ替えてb’d’c’とa’c’d’の三角形になります。蒙古襞の稜線abがa’b’になるのですが、sin60度×2=√3×2≒1.73倍の長さになります。4㎜の蒙古襞が約7㎜になり逆に横方向は、cdがc’d’と7㎜が4㎜となり、蒙古襞は表裏に皮膚がありますから、蒙古襞が1.5㎜退いて、両側で内眼角間が3㎜近づく計算です。
術直後の眼瞼部遠近二葉。上右図の近景で輻輳しても内側の白目が見えます。それに顔面幅と眼裂横径のサイズのバランスが整っています。3㎜と微妙な差ですが、見た目に解ります。
近接画像では、目頭の角が横向きです。
術後6日で抜糸しました。創の癒合は良好です。形態的には眼瞼の内側方面が良く開いたと患者さんも認識できるそうです。
創は抜糸しても、創跡はまだ赤く凹凸が診られます。今後肥厚性瘢痕にならないか念入りに診ていきます。
術後3週間で診ました。肥厚性瘢痕の有無、程度を診る為です。
現時点ではまだ、傷跡に凹凸が診られます。でも肥厚性瘢痕を呈していません。念の為ですが、術後6週間までは、肥厚性瘢痕を発症(悪化)しないか診たいと思います。
術後6週間です。
遠近二葉載せましたが、輻輳しての眼球の位置に関わらず寄り目に見えません。
問題の目頭形成後の肥厚性瘢痕は生じていません。次は眼瞼で挙筋前転を予定しましょう。
そしてその時、目頭形成術&眉下切除から3ヶ月で眼瞼下垂手術に到り、目頭は完成を診ました。眉下切開は前葉性眼瞼下垂症の治療で、眼瞼形成術は後葉性眼瞼下垂症の治療ですからまだ診療継続中で、引き続きブログ提示画像を戴けます。
目頭形成術と眉下切開術後3ヶ月でも目の窓は縦が狭いです。患者さんは垂れ目と表現されました。眉をまだ挙げていて、目と離れています。
近接画像でも目頭の傷跡は見えなくなりました。鎌型の蒙古襞が丸くなり吊り目ではなくなりました。眼裂横径は生来29㎜と大きかったのですが、顔が(身体も)大きいから小さく見えました。たった3㎜拡大しただけでもバランスがよくなりました。
眼瞼形成術のデザインです。綺麗に治って見つからない目頭形成の傷跡ですが、私が手術した痕ですし、画像からも推測できます。眼瞼形成の目頭付近の切開線は目頭の傷跡に繋げました。ライン(重瞼線)は既存の幅4.5㎜で第一切開線とし、目頭部から目尻部まで幅4㎜切除します。挙筋は結膜側からタッキングして重瞼は再建します。
術直後は痛くて開ません。本人曰く「麻酔が切れやすいのです。」高血圧で血管拡張剤を服用していますから、局所麻酔剤の吸収が早いのです。
近接画像では腫脹が亢進しています。次週以降をお楽しみに!
下には眼瞼の術後1週間の画像です。
遠近二葉載せます。腫脹がピーク時の50%以上は残り、まだ開瞼は向上していません。
重瞼線は綺麗なカーブです。
当院では、一昨年に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用は、眼瞼下垂症の診断が得られれば、眉下切開は保険診療で、3割負担は約4万円(出来高請求)です。目頭形成術は角膜が隠れる程の重症でないと、保険は適用出来ません。自費で28万円+消費税。こちらはブログ掲載の承諾で20%offとなります。なお目頭形成術後3ヶ月で眼瞼切開に依る後葉性下垂に対する手術も保険で施行しました。