2013 . 12 . 6

腋臭症(ワキガ)と多汗症(汗の臭い)Ⅱ

腋臭症の治療の説明をする前に、診断について述べておく必要がありましたね。診断が正しくないと、治療はできません。腋臭症体質は遺、伝的にアポクリン汗腺が発達する体質で、皮膚常在細菌が繁殖しやすく、その結果特有の臭いがする。という事を前回説明しました。では、どのような形質が治療対象となるのでしょうか?。多汗症との訴えでしょうか?。腋臭症体質はどうでしょう?。臭いの質はどうでしょう?。というのも腋臭症体質か、そうでない多汗症かで、治療法の選択基準が違うからです。これが診断ということです。具体的な診断基準=手術への適応性について、先ず述べます。

①遺伝、病歴などの問診:腋臭症体質は、遺伝子が決めます。中学のときに習ったアレ、メンデルの遺伝の法則に従っています。腋臭症の遺伝子は優性遺伝です。日本人では存在率が高くないのですが、約20%の人が持っています。両親のどちらかが腋臭症遺伝子を持ち、体質を持っていると、50%の確率で遺伝するのです。ですから、親や血縁者が腋臭症を呈しているかは、診断に重要な情報です。逆に、親がわきがだから、私もそうだろう?、って思って受診する人も多いです。さらに自分がわきがだから、またわきがは手術したけど、子供はどうかしらと悩む人も多く、よく相談を受けます。

でも、腋臭症体質でも、発現は思春期以降です。前にも述べましたが、アポクリン汗腺は性器の一つですから、第二次性徴と共に発達します。脇毛や陰毛が生える。男性ならひげが生え始める。女性では大き区なり始める。これらの成長=第二次性徴と共にアポクリン汗腺が増え始め、思春期ですから衛生意識がまだ低く、接触の機会が多い為に、同時に皮膚常在細菌が繁殖し始めて腋臭症を感じ始めるのです。つまり病歴で、汗の臭いが気になり始めたのが思春期以降なら、腋臭症体質の可能性が高いのです。

②臭い:腋臭症とは、アポクリン汗腺が多い体質ですが、アポクリン汗を好きな皮膚常在細菌の繁殖程度が腋臭症かどうかを最終的に決めるのです。何しろ非脇臭症体質の人に比べアポクリン汗腺の数が約4倍、大きさが2〜3倍なので、平均的に10倍のアポクリン汗が出るので、常在細菌が繁殖する確率が高いのです。患者さんは「洗ってもすぐ臭ってくる〜。」「毎日2回も何回もシャワーしているのに〜。」と言います。皮膚常在細菌は、皮膚表面だけでなく、汗腺や毛穴にも潜り込んでしまうので、皮膚表面をいくら洗浄しても消えないのです。それにアポクリン汗腺は栄養価が高いので、繁殖が早いのです。ミョウバン湿布や、消毒液湿布を数分すれば、汗腺や毛穴にも浸透しかなり減らせますが、なかなか全滅できない様です。ただし、アポクリン汗腺が多い脇臭症遺伝体質の人でも、細菌の繁殖程度が軽く臭いが解らないくらいの人も少なからずいます。特に女性で身体が小さい人では、アポクリン汗の量が10倍も無くて4倍くらいの人もいます。ですから、臭いが解らない人も、ごく稀にいらっしゃいます。

たまに、わきががうつるという説を耳にしますが、細菌がうつる事はあり得ます。でも非脇臭症体質の人では、アポクリン汗が少ないため繁殖率が低く、皮膚洗浄ですぐ克服できるようです。試しに私も付けてみたのですが、洗ったらすぐ消えました。

③耳の中:腋臭症体質でも、非腋臭症体質でも、人間である限り、アポクリン汗腺は特定の部分にしか存在しません。人では、耳の中、脇毛の範囲、乳輪、陰部にだけあります。ですから脇臭症体質の人は、耳の中のアポクリン汗腺も10倍多く、その為に、耳の中が湿っています。アポクリン汗は温熱に関係なく分泌しますから、ほとんどの場合、いつも、耳の中がベトついています。少なくとも耳かきをすると、粉こなの耳垢ではありません。話が先走ってしまいますが、手術をする時にはアポクリン汗腺を見る訳です。時に耳の中が湿っていないつまり脇臭症でない多汗症でも請われて手術をしますが、アポクリン汗腺はまばらです。耳の中が湿っている脇臭症体質の人では、アポクリン汗腺がびっしり敷き詰められていて、やはり10倍あります。

耳が湿っているかどうかはもっとも信頼性の高い診断基準です。非脇臭症体質者でもふろあがり等で濡れている時はあります。また親もわきがだし、物心ついてからずっとそうだから、そんなものと思っている人もいて、「エーッ!、みんなは耳の中が乾燥しているの?。」という人もいます。そんな人には私も綿棒で耳の中を拭いて、患者さんにも拭いてもらって比べてみせると、「そうなんだ。」と、認識して頂けます。

④ヨードでんぷん反応:アポクリン汗は炭水化物(デンプン等)を含むので、脇臭症体質の人はヨードデンプン反応で真っ青になります。汚れるので今はルーティンにはしていませんが、治療(手術でも注射でも)後のアポクリン汗の医算の程度を判定するのには使います。また、他院での手術後の、除去不足の有無を調べられます。

この様に、いろいろな観点から診断していかないと、脇臭症体質でない人も、汗臭さをわきがだと訴えてくる人がいるので誤診してしまいます。もちろん汗臭いのも治したいものですが、手術の効果は満足いかない事が多いので、診断が重要なのです。

では腋臭症体質であったらどうすればいいの?。多汗症とは治療方針が違うのか?。

そうですね。腋臭症のために社会的に障害となっている患者さんは、本邦では手術療法が保険で認められています。あくまでも日本ではマイノリティ—ですから、保険治療が認められているのです。少なくとも日本人の80%を占める非脇臭症体質の人には、わきが手術を薦めるべきではなく、どうしてもする場合は、汗腺は半分位しか減らない事を予め念を押しています。もちろん非脇臭症体質の多汗症患者には、ボトックス治療が著効します。

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