2017 . 9 . 7

鼻翼縮小術の内側切除法は久し振りですが、後戻りが少ない筈ですが、ある程度は・・。

今回は鼻翼縮小術を依頼された患者さんを御紹介します。実は3ヶ月前に口唇(白唇部)短縮術を施行した患者さんです。ブログにも載せました。大変満足されて、鼻翼縮小術を希望されました。

鼻翼最大幅は37㎜と大きく、内眼角間は28㎜と近く、バランスが悪いのです。ここは重要です。画像をご覧になると判ると思いますが、鼻翼が胡坐をかいています。下方が大きいのです。加齢現象で増大したのは、患者さん本人も認識されています。また口唇短縮術が影響している訳ではないのは、前回の画像を見れば判るはずです。

画像を見ると、鼻翼の張り出しも有り、鼻翼の付け根よりも丸く出ています。何度も言いますが、外側切除は適応が限られます。この様に丸く張り出している症例だけが適応します。チェーン店系安物美容整形屋ではコスト面から、闇雲に切除法を薦めますが、丸く張り出していないのに外側切除を受けないで下さい。ただし、外側切除は当然に、創が出来ます。抜糸まではメイクで隠せません。ですから、にわかには受けられません。日程を立てなければ出来ません。

患者さんは鼻翼を治したいと考えました。ただし人に会う機会があるそうです。外側は切開出来ないので、幅のサイズの減少を優先したいとの事。でも患者さんは勉強していて、戻りが有るのではつまらない。若年者では半分戻るのに対して、年齢と共に戻りが増える傾向が有ると、私は正直に言いました。症例は50歳代です。

するとどちらが提案するまでもなく、内側を切る案が出ました。そこで私は、数年前までは良く行なったので応じました。一般的に内側切除+糸での縮小法のメリットを知って説明出来る医師は少ないです。内側切除は、巧くデザインすれば創が見えません。基より糸のかかった所も目立ちません。これなら人に会えると考られました。どちらともなく切らない鼻翼縮小術+内側切除での後戻り防止術を施行する事になりました。

画像を提示します。先ずは術前の正面像と下面像。

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術直後の正面像と下面像。とりあえずいい形です。

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ルーラーを当ててサイズを確認します。最大幅32m

DSC00131下面像を照明下に見ると、鼻孔底に赤い創の線と黒い糸が見えます。縦に紡錘形に幅2.5m切除し、縫合した後です。

そして1週間を経て抜糸に来院されました。

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サイズは34㎜となり後戻りは最小限です。形態も胡坐鼻が丸くなって格好良いと思います。

今回切らない鼻翼縮小術に加え内側切除術を併施しました。いくつかのデザインが報告されています。鼻孔底だけの切開では寄せ切らないのですが、糸を併用すれば充分に効果が得られます。更に手の込んだ鼻孔底を切開する際に両側の皮弁化した切開線の外側の皮膚に糸を掛けて引き寄せる方法は報告されています。皮弁を寄せるとその位置に癒着してくっ付くので、後戻りが少ないという理屈です。手技が煩雑で、面倒な割に後戻りの量の予想がつかないため滅多に施行する医師は居りません。そこで今回私は、紡錘形に切除して、創の外側の粘膜下を剥離して裏側に糸を掛けました。折衷案です。真皮縫合の様に裏を縫い寄せれば後戻りが少ないと考えました。二重の手技です。後戻りの程度は予想がつきませんでしたが、現在丁度いいサイズになりました。

今回別の面に影響が波及しました。本症例患者さんは3ヶ月前に私が、口唇(白唇部)短縮術を施行して良好な結果に満足されていました。笑顔の時に歯牙が垣間見えて品が良いと悦ばれ、しかも切開手術の割に術後経過が早く治り、社会敵損失が少なかったので信頼されました。

ところが鼻翼縮小の手術後には鼻孔底が縮小した分、口唇も横方向に寄せられて、余剰が出来て膨らみます。その結果口唇を挙上するのを邪魔します。笑った時に歯が出なくなったとの事です。それはこれまでの鼻翼縮小の症例でも起こりました。でも通常鼻翼縮小手術単独症例では、鼻が小さくなったことに目が行き、口唇に意識が回りません。そして、余剰で膨らんだ口唇は約三週間で縮小します。組織が修復: remodelingします。口唇への影響は必ず解消します。

本症例は口唇短縮で満足されたのに、鼻翼縮小の影響で再び口唇がもたついたので、つまらなくなってしまいました。更に鼻翼縮小の手術は糸がかかっているために運動痛をしばらく伴います。鼻を動かす筋と口唇を動かす筋は走行が近く、不随意に同時に動きます。痛いから鼻も口唇も動かし難いのです。笑う表情もぎこちなくなります。運動痛も糸が喰い込むまでの数週間で徐々に軽減します。

念のために申し開いておきますが、鼻翼縮小の手術の術野では口唇は操作しません。もちろん神経への操作もしません。顔面の運動を司る顔面神経は、両側の耳の後下部から出て扇状に枝分かれして筋に挿入していますから、口囲の筋への頬筋枝: Buccal branch には侵襲が加わりません。腫脹が波及して筋の運動を阻害している面は有りますが、それがダウンタイムの一部です。

敢えて外側切除を優先した方が良かったのか?、それとも内外U字切除をすれば良かったのか?。創が露出しているダウンタイムはクリアーできなかったのですよね。でも機能的に動的形態に、影響が波及した結果ダウンタイムが生じたのです。

私は様々な手術をして来ましました。レパートリーの広さは本邦でも百人の指に入ると思います。(これは日本形成外科学会専門医で日本美容外科学会JSAPS専門医の人数です。)でも近傍で複数の手術をすると相互的影響がどの程度起こるかは、ある程度予想がついても想定外の場合があります。今回はダウンタイムが想定外に生じたので、経過をじっくり診て行きたいと思います。更にサイズがどれだけ変遷するかも注目点です。では来週も!。