2017 . 12 . 13

目が離れているのは眼窩隔離か蒙古襞か?。術後3ヶ月で見ると、何故か自然に綺麗!

これまで何例か目が離れている症例を提示してきました。この症例に対しては、目頭切開が必須ですが、シミュレーションしてみないと解りません。でも術後診ていくと、自然な形態に出来上がりつつあります。

症例は25歳、女性。先天性一重瞼。6年前埋没したが、外れている。LF挙筋機能11.5mm(正常値>12㎜)と先天性筋力低下に因る眼瞼下垂傾向だが、一重瞼では正常下限と考えられる。計測すると、眼裂横径は25㎜と一重瞼の人の平均だが、内眼角間距離は43㎜と正常範囲から逸脱している。でもそれは角膜中心間距離(平均値60㎜)が67㎜と、眼球が離れているからで、内眼角間距離から7㎜減じると内眼角間は36㎜と考えられ、蒙古襞の程度は一重瞼の平均と考えられた。

ブジーを当ててシミュレーションして、7mmの重瞼線をデザインしました。切除は最低限の2mmとします。先天性眼瞼下垂の比重は低く、後天性(挙筋の筋力の成長不足)の眼瞼下垂と考えられるので、眼瞼結膜側から結膜とミューラー筋と挙筋腱膜を縫縮するLT法で可能と考えた。目頭は計測結果を検討すると、蒙古襞の被さりを取り過ぎると涙湖が見えて不自然になる。ただし一重瞼を二重瞼へと正常化する際には、蒙古襞を二重瞼に合ったサイズに変えないと不自然になる。その為には標準的な一辺4mm60度のZー形成法で蒙古襞の拘縮解除だけを要し、眼裂横径は計算上1.5㎜ずつ拡大し、内眼角間距離を3㎜減じるのが形態的に適切と考えた。

術前から術後の経過を追ってみましょう。

下に術前と術直後の眼瞼部の画像を提示します。術前に何故か左眼瞼だけギョロッとしています。眉を上げる反射的運動が強く働いているのです。術直後は腫脹ですごい画像です。機能は不明です

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下に術後三日目と1週間目の画像です。術中出血に起因する腫脹は早く吸収されます。腫脹は減っても血球成分は内出血となり、それが吸収されるには平均2週間かかります。腫脹はどんどん軽減しますが、内出血の赤さは淡くなっただけです。開瞼機能は見事に得られていました。

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下左に術後3週間の画像です。予定通り内出血は消失しています。腫脹は取れて、形態と機能は得られています。重瞼もクッキリと綺麗です。本症例は内眼角間距離が離れていますが、その原因は眼窩隔離状態にあります。角膜中心間距離が67㎜です。ちなみに鼻根にヒアルロン酸を注入しました。

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上右の術後6週間の画像を診ると、ヒアルロン酸は半量吸収しています。今後もメンテナンスしていきましょう。ところが右眼瞼の開瞼が若干落ちてきました。経過を追って診ると術後1週間では開瞼良好でしたが、今となってはよく診ると術後3週間でも差が有りました。筋性または腱膜性眼瞼下垂症の改善度は如何でしょう。

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そして、術後3ヶ月で診察しました。上には二枚の露光を変えた画像です。露光を変えて目の開きが変わるのは挙筋力を調節しているからで、挙筋の力がちゃんと働いている証拠です。つまり眼瞼下垂症の改善は為されていると言えます。とにかく綺麗な目元で魅力的です。開瞼は良好化しましたし、重瞼もクッキリしています。それにアイメイクが映えています。開瞼が良好で目が語っています。

近接画像で形態を評価してみましょう。術直後と術後6週間と術後3ヶ月の比較です。

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左右を比べると右眼瞼下垂の改善度は一度後戻りが生じましたが、術後3ヶ月では見られません。挙筋の機能が何故一時的に低下していたのかのメカニズムは不明です。治ったので先天的に挙筋の機能が弱かった要素が存在したのでは無いことになります。少なくとも術後3ヶ月では、美しく仕上がって精神的に安定して、交感神経の働きが整ったのでしょう。外面的な美しさが内面的に作用する好例だといえると思います。アイメイクが自信を持っている証拠です。私のモットーとして、外面と内面の調和を図る美容医療を心掛けています。本症例は真骨頂です。

目頭切開:蒙古襞の拘縮に因る開瞼抵抗の解除に関しては明らかに自然な形態となり、機能的にも効果が見られます。では数字は?。もちろんデザイン通りに内眼角間距離は43㎜から40㎜になりました。これでも滅多に無い距離です。でも見た目にはいい感じです。眼窩の位置は角膜中心間距離(平均60㎜)で現しますが、骨の形を変えるのは難しいのです。そして眼窩の位置はバリエーションが広く、しかも顔面とのバランスも様々です。顔が小さいのに目が離れていたら魚状態ですし、顔が大きくて眼窩が近ければ虫状態です。逆に顔面幅に相当して目が離れている場合には異常感がないのでしょう。本症例はバランスが合っているのです。

眼窩は発生成長中に両側から寄ってきます。移動が少ないと鼻も成長不足になりますから、鼻根部もフラットなんです。だから、鼻根を高くする方がバランスが良くなります。また、鼻根部の目頭の間に壁というか衝立てがあれば、3次元的構造となる為に、内眼角間距離が意識出来なくなります。実際に画像を見ても、鼻根がある方がより自然な感じで目が離れて見えないでしょう。

本症例は目が離れていても、蒙古襞の改良で自然な形態を作り上げられる判りやすい例でした。創跡は経過を診ていたら消失しました。患者さんも気にならないそうです。こうしてちゃんと提示していく事が、私のブログの義務です。今回難しい点を含んでいましたが、見事に美しく仕上がりました。皆さんの参考になるでしょう。今後外鼻の改善を図る予定です。その際もブログ提示症例となるかも知れません。