2020 . 1 . 23

細面で下顔面が長いなかで上口唇の白唇が長いので、人中部だけでない両側鼻翼間の白唇短縮術が最適!。鼻尖だけ下げたら鼻柱が喰い込んでいるから鼻唇角プロテーシスも併施出来ます。

長い題名となりましたが、顔面の形態的特徴と、これまでの治療経過により、治したい部位が多数あり、それぞれを評価して二つの問題点を同時に解消できるから、説明の上症例提示したいと考えたからです。一つは懸案の白唇短縮術です。同時に創内から鼻唇角プロテーシスを挿入します。

他院で鼻尖を下げたら、魔女鼻になって鼻唇角が鋭角化して意地悪っぽい口元になったので、白唇短縮術の創内から鼻唇角プロテーシス(お隣の国では猫手術と称するらしい)を挿入しようということになった。この組み合わせは何例目かです。白唇の長さがどうあれ歯槽骨の傾斜が強く唇が尖っている人や、鼻尖が垂れている,Drooping人で鼻唇角が鋭角な人はプロテーシスの適応があります。

白唇短縮術は形成外科・美容外科診療歴30年以上の私が丁寧に真皮縫合して、後戻りのない最高級の手術をします。鼻唇角プロテーシスはこれまでにも説明したように私と父の考案です。お隣の国はパクリ文化ですが、”猫手術”とかいうニックネームまで付けて、流行らせていただきありがとうございます。ですが彼等は同時にできないようです。口周りの手術は組み合わせが必要な事もあれば、私なら希望に応じて必要なら同時手術も適応します。

症例は29歳女性。白唇長は人中部で20㎜。美容学上の顔面の縦比率はこうです。上顔面(生え際〜眉下)63㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜頤尖)63㎜で足すと顔面の縦が長い。その中でも下顔面が長い。下顔面の上下比率は上口唇(鼻の下〜交連線)27㎜:下口唇(交連線〜頤尖)36㎜で黄金分割比率の5:8で計算すると、上が5㎜長い。口角はボトックスを継続的にしていて下がっていないが、永久にしていく予定とのこと。鼻尖はSで1年前に下げた。何故か鼻尖の上が高い。いわゆる魔女鼻。鼻尖は前に少し挙げたいし、鼻唇角が食い込んでいるので増量したい。口角は挙がっているが、小さい。内眼角間32㎜:鼻翼幅33㎜:口唇幅43㎜で黄金比率で計算すると横に5㎜拡大が適応する。でも口角は、しばらくはボトックスで挙げておきたいと希望された。

その後に術前の計画は立てました。白唇は計測値に則って5㎜切除。人中と弓ははっきりしているから作らなくて良い。鼻柱基部の創の中を鼻柱方向と歯槽部へポケットを作り、鼻唇角プロテーシスを挿入。鼻中隔軟骨から約5㎜あるので、ポケットは軟骨前まで作り、下に5㎜は下げたいから幅10㎜のプロテーシスを予定。

画像は術前から術直後、翌日まで並べて比較します。

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上左が術前、計測通りの下顔面です。鼻柱はご覧の通り見えないくらい喰い込んでいます。両側鼻翼と鼻柱を結ぶと上向き三角です。上右がデザイン画、書いた直後にベッド上で下方から撮影するので、遠近法で下顔面の頤がより長く見えます。デザインはいつもの通り、両側鼻翼下を5㎜切除します。

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上左の術直後の画像では、腫脹が強く、赤唇まで腫れて厚くなり、赤唇縁が非対称です。上右の術翌日の画像では、赤唇の腫脹は軽減しています。遠い部位から腫れは取れます。鼻柱の位置は下がっているのですが、鼻翼はさらに下に引っ張られてしかも外に拡がるので、位置関係はまだ上向き三角です。数週間後には、必ず鼻翼の位置は復します。私の得意とする口角挙上術で口角を横に引いて口唇の幅を拡大していないので、鼻翼が拡がると相対的に口唇幅が余計により小さく見えています。

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上左が術前、上中が術直後、上右は翌日です。下方からの図では、鼻柱の喰い込みが判りますが、鼻翼との比較は出来ません。この方向でも鼻翼が拡がっています。確かに術翌日の画像では、鼻柱基部の喰い込みが減っています。

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右斜位像の術前、術直後、術翌日です。口元がすっきりします。赤唇が外反しているとセクシーですが、腫脹でオーバーに厚くなっています。丁度良くなります。

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右側面像の術前、術直後、術翌日です。術前像でE-ラインは直線ですが、上歯槽骨の傾斜が強いので口が出て見えます。術後に腫脹で傾斜は強くなりますが、短くなると口が出ていても、すっきりしますし、赤唇が外反すると唇らしいので綺麗です。

今回の副テーマは鼻唇角です。術前は鋭角です。白唇が余計に出て見えます。術直後は白唇が腫れてまだ直角になっていませんが、翌日診ると直角化しています。問題は正面視での鼻翼との位置関係がいつ水平化するかです。

IMG_3058今回入れたプロテーシスを荒削りした時点で撮影しました。予定通り基底部の直径10㎜にしました。形は通常に四角錐形ですが、下向き(画像の右)を突にしています。そちらに下げたいからです。画像の段階ではカクカクしていますが、この後細かくばり取り(面取り)をして滑らかにしました。

術後1週間で半抜糸した後に画像を頂きました。

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鼻翼の横の折れ返りにある創は谷線なため創傷治癒も遷延する傾向があります。ですから、術後1週間で抜糸しないで、術後2週間で全抜糸とします。数ヶ月前から定式としました。画像を視て判りますでしょうか?。アッ、鼻翼基部(鼻翼の最下点)に結び目を作ったのが断端が長くて見える。でも、鼻翼の横の糸は連続縫合でそれも螺旋状に繋げているので前から見えません。じゃあ横から見たらどうでしょう。

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右斜位像で鼻翼の中央に光る点は最上部の結紮(結び目)です。やはり連続縫合は判りません。側面像ではクルクル白い(本来は透明でも時間と共に濁って白くなる)連続糸が見えなくはないです。下から見ても同様です。下から診ると、両側鼻翼間の傷跡(抜糸したのであくまでも創跡)は赤い線ですが、Nostril sill,鼻の穴の底の土手の麓に線がある為に、若干の谷線ですから消えて行きます。少なくとも創跡の幅が拡がり、後戻りを起こす事は稀です。計測しているから間違いありません。

そんな面倒な、鼻翼の横を切開する必要はこれまで何度か説明しました。白唇短縮術は両側鼻翼間を同じ幅で取らないと富士山型の赤唇縁になります。実際他院で受けた後の何人も診ました。2回目の切除調整で治したいのですが、切除量がオーバーに成り兼ねないので判断が難しくなります。私の様に鼻翼基部の下までしっかり切除すれば、鼻翼の横に軟部組織が余ります。だから鼻翼の横の皮膚を切除して膨らみを少しでも減らし、縫合時につじつまを合わせてプリーツを作らない様にします。それでも術後早期には膨隆を来す症例がありますが、10人の内8人は自然に消退して行き術後3ヶ月で目立たなくなります。残りの2割の患者さんは目立つならCO2,炭酸ガスLASERで焼き平らに出来ます。

鼻翼基部の切除量を減らせば鼻翼横の創は作らなくてもいいので、切開線を短くする効果もあります。創跡は真皮縫合を念入り(私で最低18針)にしないと、後々(数週間)で幅が出て来てその分後戻りを生じます。他院でのこの様な問題症例をよく診ます。他院での手術後よく見られますが、私の再手術で治せます。ただし創跡を2回目の切開する際には、硬くて力加減が難しいので出来れば避けたいのですが、何例も要請されて来ました。

真皮縫合を念入りにするなら、白唇短縮術の切開線は両側鼻翼間を同じ切除幅で適切にデザイン出来ます。この手術はそこがポイントです。形成外科の技術と知識がなければ出来ないし、手術時間を要するのでチェーン店系の美容クリニックでは避けられるべきです。私は約1時間半掛けますが、Sでは45分でしないと首になるそうです。そこの医師に聴いたので本当ですよ!。

本症例では、鼻唇角の喰い込みは充分に改善されています。斜位像での鼻柱の下がり具合、側面像での鼻唇角の直線化は視認できます。ただし正面像を診ると、まだ鼻翼基部より鼻柱基部が上で上向き三角です。白唇短縮術は両側鼻翼間を同じ幅で切除しますが、鼻翼は内部に軟骨が無いので下に引っ張られるに比して、鼻柱には上に鼻中隔軟骨があり、鼻唇角の内部にはANS,Anterior Nasl Spine,前鼻棘という骨があり、皮膚軟部組織を支えている為に余り引き下げられないのです。私がプロテーシスを入れても鼻翼が引き下げられている時期は効果が不足に見られます。ただし、これまでブログで提示して来た症例をみれば判る様に、必ず鼻翼の高さは元に復します。その時は鼻唇角プロテーシスの意味、効果がよく見えて判る様になる筈です。筈なのは、この組み合わせ手術は数例しか経験が無く、また下げる程度が症例ごとに差異があるので、本症例がどれだけの効果を得るかは術前の予想に過ぎないからです。上のプロテーシスの説明にある様に鼻中隔軟骨から10㎜下までのプロテーシスを入れたので、鼻柱は5㎜は下がるでしょうとしか言い様がありません。

次回術後1か月を経過して、どこまで下がるかが見ものです。個体差があるので判りません。アッそうだ!鼻翼横の糸を残したから、術後2週間でまた画像を頂けます。

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間違いなく、鼻翼の位置は上に戻りつつあります。鼻柱もちゃんと下がっています。上向き三角形が小さくなり始めました。鼻翼と鼻柱の高さの差は間違いなく術前より少なくなりました。いつかは水平になるでしょう。楽しみですね!。

ところで本題の白唇短縮術の効果は見事です。赤唇はまだ腫脹がありますが、上下口唇の比率が整って来ました。長い下顔面のうち、術前は上が長く見えました。数字的にも明らかでした。術後は鼻の下から上赤唇と下赤唇から頤尖までのバランスが丁度良く見えます。計測値で5:8になっています。やはり黄金分割比が適切なのです。レーナルドダヴィンチは偉い!。

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斜位像でも側面像でも、赤唇が綺麗です。上下のバランスも整っています。鼻唇角は鈍角化して喰い込んでいないので口元が優しい。下面像ではまだ鼻柱が腫脹していてSでの傷跡の線が凹んで見えます。直線で切開すると凹みが残るのです。それにしても下から見ても鼻唇角の喰い込みが無くなっています。鼻唇角プロテーシスは正解です。

ところで口角はボトックスが効いているのか切れているのか不明ですが、赤唇の腫脹が引いて来たら相対的に挙がっていなくなって来ました。今後経過を診て行きましょう。

次回術後1か月では鼻翼に位置がもっと挙がるでしょう。腫脹もまだまだ!。

下に術後1か月の画像。その前に比較の為に術前の正面像を再掲します。IMG_3050何か不自然な鼻尖と鼻柱と鼻翼の位置関係です。
IMG_3732IMG_3737この方が自然な鼻の形態です。鼻翼の位置はまた挙がって来ました。鼻翼と鼻柱の上下位置関係は鼻柱を下げたの分、術前より水平に近づいています。鼻尖との位置関係も自然になりつつあります。

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下から診ると、創跡は術後1か月ではまだ赤い線ですが、幅は出ていません。あくまでも線です。いつか白くなります。斜位像と側面像ではE-ラインが綺麗です。口の形は可愛いです。やはりまだ鼻翼に鼻柱が隠れています。

術後3ヶ月までまだ変遷します。完成を診ましょう。

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白赤とも可愛い。C−カールも出来た。弓もはっきりして人中も深く。鼻翼と鼻柱は水平。ボトックス(*脚注)は切れている筈ですが、ご覧の様に口角は下がっていません。口角下制筋が萎縮して働かなくなったのでしょう。「完成!」と申し上げました。

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。鼻唇角プロテーシスは15万円+消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。

*脚注:ボトックスはボツリヌストキシン,Botulinus Toxinを精製した薬剤です。製造は容易ではありません。ボツリヌス菌は本来環境中、特に土中などにいくらでもいる菌ですが、ここは低酸素で、菌は嫌気性(酸素に暴露すると死ぬ)菌ですから、製造過程が難しく、しかも菌そのものでなく菌が分泌する毒=化学物質が効果的なので、これをもらうのはもっと難しい訳です。怪我した時に土で汚れると神経が殺られて病気になるのは有史以来知られていましたから、微生物学が進化した後には利用価値があるので、精製が試みられました。まず第一の利用価値として、最近兵器または化学兵器の研究がなされました。第二次大戦時にはナチスもユダヤ人で実験して試みましたが失敗しました。日本でオウムもトライしましたが撒いて使うにはコストが合わなくて断念しました。1970年代には英国でなんとか成功しましたが、もう戦争目的ではありません。薬剤としてです。

ボツリヌストキシンは神経筋接合部を遮断します。運動神経が筋に入る部に挟まって電気が流れない様にします。よく私は説明に応用するのですが、コンセントを抜く様な行為です。ボツリヌストキシンは注射すると局所(量と濃度にもよりますが約1㎝の範囲)の筋が動かなくなります。ちなみに呑んだり、吸ったりしても全身に到って、つまり呼吸筋を止めて死に至らせることはかなり難しいのです。概算すると眉間に使う量の1000倍要します。眉間に使う量が1万円だとすると、一人殺るのに1000万円必要です。

筋は脳からの神経の電気信号により収縮しますが、意識的な随意的な運動は1%程度しか行われていなくて、無意識に不随意に信号は発せられています。特に表情筋は、顔面にありますから、見ながら動かしているのでなく、情動に応じて不随意に動いています。また、覚醒時は重力に対抗して精気を帯びる様に顔面表情筋には微弱な電気が流れ続けています。

だから部位により表情筋の強さは様々です。挙上筋群には常時電気が流れています。精気のある表情をを保つためです。逆に挙上筋を止めることは求められることが滅多にありません。額くらいですが、まぶたの代償作用ですから、二次的です。眉間縦じわは、表情として悩みの皺,Frown lineですが、日本人は怒っている顔と捉える人が大多数です。これは嫌な表情なので止めるべきです。実は眉間のシワを作る皺眉筋は下制筋の一つです。下制筋は人格を貶める表情を作るのです。

ところで「ボツリヌストキシンが切れる。」という言葉を使いますが、医学的には違います。確かに効果は最長6ヶ月でなくなりますが、トキシンが壊れるのでも吸収されるのでもなく、近くに別の神経が枝分かれして伸びていって信号が再開します。生きている人なら神経線維と神経筋接合部は再生するのです。

口角を下げる表情も嫌な表情ですが、口角下制筋は口を閉じる際にも、作用反作用で働いています。ボトックスで止めると挙上筋群の作用で口角が挙がります。ただし逆に重力に対抗する筋ではないので弱い筋なのでしょう。だから定期的にボツリヌストキシンを注射していると、筋が退化する可能性があります。残念ながら他の表情筋では起きない様です。

もしかしたら本症例ではボトックスが功を奏して、口角下制筋が萎縮して口角が下がらなくなっているのかも知れません。口角挙上術が不要になり得ますが、どうでしょう。